ヒストリーボーイズ
ヒストリーボーイズ 2014年9月
2005年に英ローレンス・オリヴィエ賞、翌年に米トニー賞をとったアラン・ベネットの戯曲を、常田景子翻訳、小川絵梨子演出で。頭のいい美形男子たちの、爽やかな青春群像劇だ。イギリスらしい感覚なのかな。ただ知識不足で、人物やセリフの背景がやや掴みづらかった感じ。世田谷パブリックシアターの後ろの方で8800円。休憩を挟み3時間弱。
舞台は1980年代の工業都市シェフィールド。グラマースクールの校長は、進学クラス8人の「オックスブリッジ」合格を必達目標に掲げ、徹底して受験テクニックを手ほどきするため、若い教師アーウィン(中村倫也)を雇う。対照的に教養を重んじ、自由奔放に講義する老教師へクター(浅野和之)、そして生徒たちの間に起きる事件。
教師も含めてなぜかゲイ率が高く、教室という小宇宙には歴史の見方、学ぶということ、人種や宗教、そして屈折した恋をめぐって、様々な波紋が広がっていく。テーマは重いけど笑いがあり、生徒たちが自在に詩を引用したり、フランス語を操ったりと才気煥発で、好感度が高い。
セットはほとんど椅子とピアノだけで、シンプル。リアルな会話劇だが、椅子の並べ替えなどは群舞のように緻密だ。床に敷いた模造紙をどんどん破きながら、答案用紙に見立て、最後は畳んで棺にしちゃうという意表をつくアイデアが秀逸。美術は堀尾幸男。
大人っぽくてモテまくるデイキンの松坂桃李が、得な役。細い長身が映える。そんなデイキンに思いを寄せる、ユダヤ系で繊細過ぎるボズナー役の太賀が、切なくていい。歌も達者! 冷静なスクリップス役・橋本淳も、舞台回しでなかなかの存在感だ。ほかにスポーツマン・ラッジの小柳心、しゃきしゃき女性教師ドロシーの鷲尾真知子ら。
一人ひとりの人物をしつこくは掘り下げない知的な戯曲のせいか、個人的にはちょっと展開についていけなかったのが残念。若手男優陣に伍して、曲者・浅野のリズム感が目立ってました。
« ビルのゲーツ | トップページ | 秋らくご「金明竹」「看板のピン」「紙入れ」「お血脈」「牡丹の怪」 »
「演劇」カテゴリの記事
- ドードーが落下する(2025.01.18)
- 消失(2025.01.25)
- 2024年喝采尽くし(2025.01.01)
- 天保十二年のシェイクスピア(2024.12.28)
- モンスター(2024.12.28)
コメント