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文楽「不破留寿之太夫」

文楽9月公演第三部「不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)」  2014年9月

今月の文楽は3部構成で、夜は珍しい新作喜劇だ。シェイクスピア劇の人気キャラ、ファルスタッフが、太鼓腹で愛嬌たっぷりの人形になって躍動する。女性中心にいつもより客層が広い感じの国立劇場小劇場、下手寄り前の方で4500円。筋書も3部だけ別冊になっていて700円。休憩なしの1時間半弱。

生誕450年のシェイクスピア作品から、蜷川演出で観た「ヘンリー四世」とオペラでお馴染み「ウィンザーの陽気な女房たち」をベースに、鶴澤清治が監修・作曲。脚本は河合祥一郎、美術は石井みつるだ。
劇場に入ってまず、床にあしらわれた草原のような模様に驚いていると、大夫、三味線も同じ模様の裃で登場! 「とーざい」無しにウィンドチャイムのような鳴物で幕開けし、人形はキラキラの衣装にピアス(へそピ含む)、ライティングも現代的で、ストロボまで点滅するなど、異色づくめで目が離せない。杉本文楽の影響もあるのかな。字幕は無し。

自堕落な不破留寿(勘十郎)は、居酒屋女房お早(蓑二郎)と蕎麦屋女房お花(一輔)に酒をおごらせようと企んで、亭主たち(勘市、玉佳)に逆襲される。また旅人(紋臣)から奪った金を、変装した春若(和生、ハル王子ですね)に取り上げられたのに、居酒屋では大勢と戦ったとホラを吹いて、やりこめられちゃう。言葉遊びなどギャグが満載で、観客の反応もいい。
大詰めでは領主を継いだ春若が、なんと「太り過ぎ」と宣告して不破留寿を追放。そもそも春若は敵を油断させるために放蕩していた、という設定で、やんちゃな若者が成長して名君になる原作のイメージとはちょっと違う。その分、失意の不破留寿に焦点が絞られていて、「名誉より命が大事」と反戦の思想を語り、なんとイギリス民謡「グリーンスリーブス」にのって、悠々と客席の通路を引き上げていく。ちょっと説明し過ぎるけど、哀愁があって格好いいし、現代的なテーマがくっきり。冒頭と居酒屋、ラストにはシェイクスピアの姿も。近松が登場する「三谷文楽」を思わせて重層的だ。

床は英大夫が「普段のキャラで(!)」、ハチャメチャなタイトロールを熱演。呂勢大夫、咲甫大夫、靖大夫も伸び伸びしている。三味線は清治さんが指揮者役。人間国宝が楽譜をめくったり、人形の様子を伺ったりする珍しい姿を見せます。ほかに藤蔵、琴をハープみたいにかき鳴らす清志郎、胡弓の弦でメロディを奏でる龍爾(大弓?)、そして清公。
人形は全員黒衣姿で、凝った人形を印象付ける。不破留寿だけはカシラを新調したそうで、武将並みにデカいのに桜に登ったり、ぐるぐる回ったり。勘十郎さん、大変な運動量だなあ。左は幸助さん。
セットはスケールが大きく、美しい桜と、居酒屋の2種類。居酒屋ではお品書きに「ふぃっしゅ&ちっぷす」があったり、柱が崩れたり、遊びも多い。チャレンジだけど、意欲的な新作は盛り上がるし、シェイクスピア好きも足を運んでいたようで、いいものです!

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