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カッコーの巣の上で

カッコーの巣の上で  2014年7月

管理社会における人間性の解放を訴える鮮烈なドラマを、小栗旬が熱演。若い女性を中心に幅広い観客が集まった。東京芸術劇場プレイハウス、中央あたりのいい席で1万円。休憩を挟み3時間弱。

「カッコー」といえば1975年に、ユダヤ系チェコ人ミロス・フォアマンが監督したアメリカン・ニューシネマの名作。ビデオをレンタルして、あまりに感動して続けざまに2回観た記憶がある。というわけで、どうしても映画と比べながら観てしまったけど、原作は1962年のケン・キージーのベストセラー小説で、映画化より前にブロードウエイで舞台になり(カーク・ダグラス主演)、日本でも何度か上演しているとのこと。知らなかったなあ。
今回の河原雅彦の上演台本・演出は「ねずみの三銃士」なんかのタッチより穏やか。俳優陣のパワーに任せたのかな。深刻な設定の割に、休憩のところでラックリー(吉田メタル)をバスケ遊びのゴール役にしちゃうシーンとか、笑いもあって暗くない。

ワールドシリーズをテレビ観戦する、大好きなシーンなどは映画と同じ。乱暴者のマクマーフィ(小栗)はもちろん、患者たちも欠陥だらけだけど、抑圧からの脱却を求める思いの、なんて切実なことか。
一方で映画と大きく違うのは、病棟のワンセットという点。海に繰り出すあたりの高揚感はない。また殻に閉じこもったチーフ(山内圭哉)の独白(プロジェクションマッピングが幻想的)が挟まったり、婦長ラチェッド(神野三鈴)が患者たちにたびたび「ボーイズ」と呼びかけて、憎々しいというより母親っぽかったり、それぞれ人間味がにじむ。映画版で感じた、乾いた不気味さは抑えめだが、人物の背景がわかりやすい。

芸達者が揃ったなかで、特にいつも怯えているビリーの大東駿介が、切なくて秀逸。まだまだ楽しみな役者さんだ。小栗は長身で格好いい。どうしてもジャック・ニコルソンの野卑さを期待しちゃったけど、キャラが全く違いますね。山内や武田真治、福田転球が安定し、岩松さん作品でよく観る駒木根隆介君も手堅い。藤木孝、無気力な医師スパイヴィの吉田鋼太郎はあまり見せ場がなくて残念。ほかに木下あかり、八木のぞみら。カーテンコールが爽やかでした~

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