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ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと――

マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと――」  2014年6月

現在29歳の藤田貴大が作・演出。2011年の岸田國士戯曲賞受賞作を大幅に再構築したという。畳みかけるセリフとでんぐり返しが独特の空気を生んで、不器用に、だけど繊細に「帰る場所の喪失」を描き出す。若いファンが多い東京芸術劇場シアターイースト。整理番号順に入って、自由に席を選ぶ形式だ。前寄り中央で、お得な3000円。休憩なし1時間50分。

都会で家庭を築いた長女りり(声が印象的な成田亜祐美)と次女すいれん(荻原綾)が、今では長男かえで(張り切り気味の尾野島慎太朗)が一人で住む故郷の家に帰ってくる。取り壊されると知ってあふれ出る、この家で過ごした日々の、忘れられない記憶の断片。父の死、従兄の事故死、りりの旅立ち、すいれんの傷心。
視界はあくまで半径3メートルの、些細でありふれた日常だ。いっそ古臭いほど。だからこそ、一本調子なまでの言葉と動きのリフレインが、観る者の心の底にある哀しみをぐいぐい引っ張り出す。ドラマチックな驚きがあるわけでもないのに、昨年の「モモ」同様、終盤ではすすり泣く女性も。不思議な魅力だなあ。
それにしても、女子の気持ちがわかり過ぎ。りりの娘(個性的な吉田聡子)とすいれんの娘(川崎ゆり子)、十代同士の喧嘩シーンが瑞々しくて、ちょっと笑える。家族団欒に紛れ込む、すっとぼけた旅人あんこ(召田実子)もいい味だ。ほかに伊東茄那、波佐谷聡、斎藤章子、中島宏隆、石井亮介。

俳優全員が白い衣装で個性を抑え、自在に年齢を行き来する。俳優自ら中央の舞台(盆)を手で回し、細い角材で家を組み立て、解体するのがちょっと学園祭っぽい。「そっか、そっか」とか、歌うようなセリフ回しなので、上手い下手はよくわからないんだけどね。
前半には舞台奥で食事を用意する手元を、カメラでスクリーンに投影する面白い趣向もあった。ずっとこのまま内省的なのか、変わっていくのか、気になる作家、劇団です。
パンフは小さい折り紙風で、飴のおまけ付き。客席には山中崇さんがいらしてました~
009 012

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