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テンペスト

テンペスト  2014年5月

生誕450周年シェイクスピアの、単独執筆では最後となったロマンス劇を、松岡和子翻訳、白井晃の斬新な演出で。新国立劇場中劇場、中央前のほうのいい席で7350円。休憩を挟み約2時間半。

元ミラノ大公プロスペロー(古谷一行)が、美しい娘ミランダ(高野志穂)と暮らす桃源郷のような孤島。魔術で嵐を起こし、かつて自分を追い落した憎い弟アントーニオ(長谷川初範)、ナポリ王アロンゾー(田山涼成)らの一行をおびき寄せる。策略通り、無垢なナポリ王子のファーディナンド(伊礼彼方)とミランダが恋に落ちて、再生と希望を体現。大人たちは許しと和解に至る。
島に棲む空気の精エアリアル(碓井将大)や怪獣キャリバン(河内大和)が活躍。征服者プロスペローは最後に彼らも解放し、魔術を捨てて故郷に帰って行く。人生の終幕を見据え、人間という儚く弱い存在、その業に向きあう。虚しさ、哀しさが漂う深いエンディングは、偉大な作家が到達した境地なのか。まさにこの世は舞台。

白井晃でシェイクスピアを観るのは、1年前の「オセロ」以来だ。今回は無数の段ボール箱でセットを構成。作業員風の黒子たちが無味乾燥な台車で動かし、積み上げたり崩したりして、時に森、時に街を作り上げる。ところどころ、はためく布やミラーボールも。手品みたいに人の手足が伸びて見えたり、キッチュで手作り感が濃い。
ネタバレですが、後からトークライブで解説を聞いたところ、孤島は長く恨みにとらわれていたプロスペローの内面で、嵐によって時間が巻き戻り、無数の記憶が詰まった箱の蓋が開く、という解釈だそうです。なあるほど。面白いけど、ちょっと難しかったかな。

役柄にぴったりの渋さを発揮する古谷をはじめ、田山らベテランは安定した演技。若手では高野が可憐で、意表をついて車椅子で登場する碓井が、表情豊かで新鮮だ。ほかにナポリ顧問官ゴンザーローに山野史人、道化師トリンキュローに野間口徹ら。舞台後方でアコーディオンなどが生演奏するため、俳優はマイクを使用。

ホワイエにグローブ座の模型やら、近く「ファルスタッフ」を翻案する文楽のPR展示やらが並んでいて楽しかった。

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