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ローマ歌劇場「シモン・ボッカネグラ」

ローマ歌劇場「シモン・ボッカネグラ」  2014年5月

終身名誉指揮者ムーティが率いるローマ歌劇場の来日公演で、巨匠の音を堪能する。東京文化会館大ホールには小泉元首相や財界人の姿も。1F前寄り下手はじのA席で4万7000円。プロローグと第1幕を続けて、30分の休憩を挟み第2幕、第3幕を続けてトータル3時間強。

地味な歴史ものながら、ヴェルディらしい対決と和解の人間ドラマだ。複雑だけど宗教色がなく理解しやすい。流麗なムーティ節にのって、低音域の歌手が大活躍する。
元海賊のシモン(ジョルジョ・ペテアン、少し若めのルーマニアのバリトン)は、平民派リーダーのパオロ(マルコ・カリア、野性的なイタリアのバリトン)に口説かれてジェノヴァ総督に就く。栄光の陰では、愛するマリアの死と一人娘の行方不明、さらにマリアの父・貴族フィエスコ(ドミトリー・ベロセルスキー、堂々たるロシアのバス)との敵対という悲劇があった。
25年後、シモンは美しく育った娘アメーリア(エレオノーラ・ブラット、可憐なソプラノ)と劇的に再会。求婚を拒絶されたパオロがアメーリアを誘拐しちゃって、恋人で貴族派の闘将ガブリエーレ(フランチェスコ・メーリ、ジェノヴァ出身のテノール)が救出すると、シモンはパオロを呪う。並行して政治劇が進行しており、シモンはヴェネツィアとの和平、貴族と平民の融和を訴える。
ガブリエーレはアメーリアがシモンの愛人になったと誤解し、激昂するが、父娘の秘密を打ち明けられて和解、貴族派の反乱を抑える側に回る。大詰め、シモンはパオロが仕掛けた毒におかされ、苦しい息の下からアンドレア(フィエスコ)とついに手を取り合う。そしてアメーリアの腕の中で息絶える。

オケが凪のような前奏から繊細に旋律を奏でて、気持ちいい。華やかなアリアには乏しいけれど、1幕の恋人同士の甘い二重唱「空の青さをご覧ください」や、2幕ガブリエーレのドラマティックな「わが心の炎が燃える」が印象的。低音3人はローキーでスタートしたものの、徐々にパワーをあげた。若い2人、特にフリットリ降板を受けたブラットは出だしがかなり固くて、どうなることかと心配だったけど、休憩後は若く伸び伸び。
2012年制作のエイドリアン・ノーブル演出は、セットも衣装もオーソドックスなもの。音楽重視のムーティ好みかな。照明を抑え、セットの背景に海が輝いているくらいで、全体に落ち着いていた。カーテンコールの一番人気は、やっぱりムーティーさまでした~

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