春の正蔵「道灌」「徂徠豆腐」「壺算」「山崎屋」
第二期「林家正蔵独演会 春の正蔵」 2014年4月
定例の正蔵さんの会。いつものように200人ほど、親密な雰囲気の紀尾井小ホールで3000円。最前列の席が続いていたけど、本日は中央あたりだった。休憩なしで2時間。
前座はたま平がお馴染みの「道灌」。元気だけど、まだ頼りない。
正蔵さんがトコトコ登場。近くの下町に成城石井ができたら、今までのスーパーに比べてだいぶ上品だ、値の張る湯布院の豆腐があってとろとろで…といったマクラからネタ卸しの「徂徠豆腐」。以前に春陽さんの講談で聞いた逸話だ。増上寺門前の豆腐屋が、食うや食わずで学問する若い徂徠にほれ込み、おからを届け続ける。高熱で寝込んでいる間に徂徠が居なくなって、てっきり死んだかと悲しんでいたが、火事で店を無くした後、仕官して立派になった徂徠が現れて恩返ししてくれる。
赤穂浪士切腹の解説などは一切なくて、とてもシンプルな人情噺になっていた。徂徠さんの偉さ加減は控えめ、むしろ豆腐屋の気立ての良さ、苦境でも飛び出す女将さんのナンセンスジョークがいい味だ。それにしても、落語に出てくる物売りの声って、のんびりして好きだなあ。
中入りなしで、つる子が出てきたのでびっくり。二つ目が手配できず、前座2人の合わせ技で…と、初めはちょっと不安だったけど、どうしてどうして。増税前に回数券を買った、4月になっても値下げされないから、得して嬉しかった、たいした額じゃないけど、という親しみがもてるマクラから「壺算」。はきはきしてましたね。
続いて着替えた正蔵さんが、再登場。江戸時代の廓言葉を説明してから「山崎屋」。初めて聞いた噺です。
日本橋の鼈甲問屋の若旦那が、堅いはずの番頭にお妾さんがいるのを知り、それをネタに廓通いのカネをせびる。番頭は本気なら花魁と一緒にしてやろう、と一計を案じる。その策とは、若旦那が遊びを半年我慢して、ようやく任された掛けの大金を落としてしまう、それを近所の鳶頭が届けてくれ、父親が礼を言うため頭の家に行くと、姪という触れ込みの花魁と出会う、というもの。父親がしとやかな娘を気に入って、首尾よく一緒になるハッピーエンドだ。
花魁が思わず口にしちゃう「北国」とか花魁道中とか、オチの「三分で新造がつきんした」とか、解説を聞かないとわからない難しい噺だけど、ストーリーは他愛なくて明るい。策略をめぐらす番頭がなかなか曲者なんだけど、そのあたり正蔵さんは素朴であっさりした造形。これはこれでいい。
本日の2題、古風さが似合ってましたね。少しお疲れ気味に見えたのが心配ながら、段々にそういう年齢なのかなあ。
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