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空ヲ刻ム者

スーパー歌舞伎Ⅱ「空ヲ刻ム者 若き仏師の物語」  2014年3月

エンタメ4連続のラストは、3代目猿之助の看板シリーズを継承した4代目によるスーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)。作・演出はなんと現代劇から、お気に入りの前川知大、スーパーバイザーに市川猿翁、音楽は長沢勝俊と藤原道山。おばさま度高めの新橋演舞場、1F中央のいい席で1万5000円。2回の休憩を挟み、たっぷり4時間40分。

舞台は古代宮廷時代らしいし、附け打ちが入るけど、全編現代語、衣装は色鮮やかなラメラメで、歌舞伎というより猿之助オリジナル演劇、ちょっと新感線風、の趣だ。ストーリーの軸はやんちゃな若い仏師・十和(猿之助)の成長談。家柄と才能に恵まれながらも、安住できずに決められた型を壊し、悩みながら前に進んでいくという展開で、まるで本人の決意表明です。

主要キャストの口上に始まり、一幕は若者2人の旅立ち編。十和は母(笑三郎)を死なせた師・父に反発して、貴族から受注した仏像を足蹴に。さらに弟弟子(素直で達者な福士誠治)を傷つけられて、役人を殺めてしまい、故郷を逃れる。同時に幼馴染の一馬(佐々木蔵之介)は、庶民のための政治という理想を胸に、都にのぼる。ちょっと説明が多いかな。
二幕は迷い編。十和は都で双葉(きっぷのいい笑也)、吾平(味のある猿弥)、喜市(弘太郎)らの義賊一味に加わり、貴族のための仏像を壊して回るが、仏師・九龍(重厚で格好いい右近)に諭され、再びノミを握る決意をする。仏像のポーズ=型についての議論など、芸談みたいな理屈っぽさがあるものの、進むべき道を見出す真摯な叫びは感動的です。一方、一馬は権力の座を狙う貴族・長邦(門之助)に加担し、さらに長邦の妻・時子(春猿)に誘惑されちゃうけど、心中の葛藤を双葉に見抜かれて、惹かれていく。
三幕はついにスペクタクルが炸裂。一馬が身勝手にも、庶民の扇動に十和の仏像を利用しようとするが、十和は「仏は観る者の鏡だ」と高らかに宣言して、木くずだけの「空」でこたえる。客席いっぱいに舞う紙吹雪が、とってもカタルシス! ここからは怒涛の展開です。九龍の魂が宿った巨大・不動明王像が、豪快に崩れ落ちるセットのなか、回心した一馬と十和を応援。2人は破滅するにきまっている庶民の反乱を止めようと、宙を飛んでいく。手に手を取った長い宙乗りが微笑ましく、猿之助は実に楽しそう。お約束、ラストの立ち回りは戸板を組み立てたアクロバットに工夫があって、見せましたね~

猿之助は溌剌と、堂々の座頭ぶり。佐々木蔵之介がまったく歌舞伎らしくないけど、落ち着いて舞台を牽引していたし、後半はなかなか色っぽかった。ちなみに売店では実家・佐々木酒造の特製日本酒を売ってましたね。産婆・鳴子役の浅野和之は、猿弥との絡みがぐだぐだになったりして存分に笑わせたけど、狂言回しのほうが忙しくて本来の曲者ぶりを発揮するに至らず、勿体なかったかな。とにかく猿之助一色、エンタメ満載のなかで宙乗りに必然性を与え、さらにひとひねり、テロリズムの哀しさを訴えた前川戯曲に拍手。

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