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花子について

現代能楽集Ⅶ「花子について」  2014年2月

東京に2週続けて大雪が降った翌日。芸術監督・野村萬斎が古典劇の現代アレンジを企画・監修するシリーズに、初めて足を運んだ。今回は人気者の倉持裕が作・演出で、才気たっぷり。いろいろチャレンジしてますねえ。
1幕ものの舞踏1本、ドラマ2本はいずれも、「女の怖さ」を軽妙な笑いをまじえて描いていて、分かりやすかった。悪条件にも関わらず、まずまずの入りで、客層も幅広い。シアタートラムの前から2列目左寄りで5500円。休憩2回を含め2時間。

導入の「葵上」は著名な能をコンテンポラリーダンスで。生霊の女(六条御息所、黒田育世と宮河愛一郎)が伏せっている妻(葵上)を脅かし、鬼に変化するものの、祈祷の声に鎮められる。NODA・MAPなどを手掛ける黒田の振付は、鬼気迫りつつもちょっとコミカル。印象的な赤のセットと衣装、揺れ動く布や影の造形が面白かった。

続く「花子(はなご)」は狂言がベースで、「班女」の後日談にあたるとか。歌舞伎「身替座禅」にもなっているコメディーですね。夫(小林高鹿)が愛しい花子に会いに行くべく、取引先の風見(近藤公園)を身替りに置いていくものの、妻(片桐はいり)は企みを見破り、風見と入れ替わって夫を待伏せる。
町工場の設定で、原作の座禅衾のかわりに溶接マスクで顔を隠す工夫。お馴染みペンギンプルペイパルズの小林が軽快に、無茶な言い訳を繰り広げ、あげく相手が妻とも気づかずに、歌や踊りまでまじえて浮気の首尾を語ってしまって、大いに笑わせる。男ってしょうがないなあ。唐突に床下から飛び出す、猫のぬいぐるみも可笑しい。

ラストの「班女(はんじょ)」は世阿弥作とされ、かつて交換した扇に恋人を想う花子を描く能。今回は三島由紀夫のリメイク戯曲「近代能楽集」をベースにしている。孤独な漫画家・実子(片桐はいり)は花子(西田尚美)の狂気をはらんだ美しさにひかれ、同居して面倒をみている。吉祥寺駅のタクシー乗り場で恋人を待ち続ける花子の姿がネットで噂になり、ついに当の吉雄(近藤公園)が家に訪ねてくる。しかし花子が何故か「あなたは別人だ」と言い出して吉雄は去っていき、再び女2人の、ただ待つだけの暮らしが続く。
掲示板やSNSを駆使した設定に、うすら寒くて殺伐とした現代が透けて見えて、巧い。純粋な美が引き起こす悲劇なんだけど、片桐の存在感で、舞台全体にペーソスが漂い、奥行きが加わった。花子を渡すまいと吉雄相手にまくしたてたかと思うと、シュレッダー屑が舞い上がって転じた雪を黙々と箒で掃いたり、振幅が大きくて印象的だ。
カーテンコールでは片桐がちょっと照れながら、来場に感謝してました。

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