« 天保水滸伝 | トップページ | 小三治独演会「近日息子」「一眼国」「あくび指南」 »

文楽「七福神宝の入舩」「近頃河原の達引」

第一八六回文楽公演第一部「七福神宝の入舩」「近頃河原の達引」  2014年2月

都心に45年ぶりの大雪が降った翌日。気温は低いけど快晴となり、エンタメ度の高い演目を楽しんだ。いつもに比べればやや空席があるものの、若い人、外国人も含めて客層は幅広い。古典芸能通の知人とも遭遇。席は国立劇場小劇場の中央、やや後ろめで5700円。30分の休憩を挟んで3時間。

2014年の文楽初めは、めでたく「七福神宝の入舩(いりふね)」。東京では10年ぶりだそうです。大夫が松香大夫以下7人、三味線も清友以下7人、床からはみ出してずらりと並んで壮観だ。幕が落ちると、ぱあっと明るい船上に神々が集って、酒盛りの真っ最中。「銀世界」という言葉が、偶然にも今日にぴったりだ。順に隠し芸を披露することになり、三味線陣の腕の見せどころとなる。
寿老人(文司)は琴、布袋(幸助さん)は豪快に腹鼓、大黒天(清五郎)は胡弓。渋っていた弁財天(蓑一郎)も琵琶を披露し、福禄寿(文哉)は獅子頭を載せた長い頭を、器用に伸び縮みさせてコミカルに踊る。さらに恵比寿(紋臣)は手にした長い竿で船べりをリズミカルに打ち、エビスだけに生ビールまで飲んじゃって悪乗り気味。ついに大きな鯛を釣りあげ、受け取った布袋さんたちが上手にピクピクさせるのが可笑しい。最後に甲冑をまとった無粋な毘沙門(玉勢)が、誰も誘わないと文句を言って進み出るが、やっぱり音曲は苦手。大騒ぎして賑々しいエンディングでした。観ているほうも思わずニコニコ。

ロビーで休憩し、「近頃河原の達引(たてひき)」へ。2008、2011年にも観たことがある、変化に富んだ世話物だ。導入の四条河原の段は文字久大夫、咲甫大夫らに宗助。暗闇のなか、官左衛門と勘蔵が悪事を相談している。そこへおびき出され、散々にいたぶられた伝兵衛(勘壽)が無言での激しい立ち回りの末、官左衛門を返り討ちにしてしまう。上方唄「ぐち」とメリヤスが不穏だなあ。大詰めで、背後にぱっと墨絵のような風景が表れるのが、悪夢から我に返る印象で鮮やかだ。

続けて堀川猿廻しの段は、前半でお待ちかねキング住大夫さん、錦糸が登場。滑り出しこそ響きは今ひとつかと思ったけど、やっぱり渋くていいなあ。粗末な猿廻し・与次郎宅で、まず老母(文昇)と近所の娘おつるが三味線を稽古し、悲劇を暗示する地歌「鳥辺山」を聴かせる。ツレは龍爾。
帰ってくる与次郎は玉女さん。玉男襲名のビッグニュースが発表になったばかりとあって、拍手が起きます。武将のイメージが強いけど、コミカルで実直な役も意外と合うんだなあ。与次郎が母に心配かけまいと、精一杯見栄を張る孝行ぶりを見せる。そこへお尋ね者となっちゃった伝兵衛の恋人で妹のおしゅん(紋壽)が、遊女だけにありえないきらびやかな姿で登場。兄はひとり豪快に食事しながら、妹を励ますけれど、おしゅんは煙管をつかいつつ沈み込んでいる。実はもう恋しい伝兵衛との心中を決意していた、というわけで、兄、母に伝兵衛への退き状と偽って書置きをしたためる。文字の読めない兄が切ない。
奥は津駒大夫に、人間国宝・寛治で安定感抜群だ。ついに伝兵衛が訪ねてきて、慌てた与次郎が、間違えておしゅんを締め出しちゃうドタバタを展開。伝兵衛が書置きを読み上げ、妹の真意が明らかになってからは、一転してしんみりと。おしゅんの「そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さん」のクドキ、そして母の語りも痛切だ。与次郎は2人に逃げのびてもらいたい一心で編み笠を与え、精一杯明るく祝言の芸を披露する。2匹の猿は一人の遣い手が、左右の指人形でリズミカルに表現。ツレは孫の寛太郎君が堂々と。そんなカラ元気が一層悲しく、2人を送り出して幕となりました~

0209a 0209c

« 天保水滸伝 | トップページ | 小三治独演会「近日息子」「一眼国」「あくび指南」 »

文楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 文楽「七福神宝の入舩」「近頃河原の達引」:

« 天保水滸伝 | トップページ | 小三治独演会「近日息子」「一眼国」「あくび指南」 »