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2013年喝采づくし

振り返れば2013年も大充実の喝采づくしでした。なんといってもヴェルディ、ワーグナーのダブル生誕200年という記念の年。にわかヴェルディ派としては、ハイライトは名門ミラノスカラ座の来日公演かなあ。ハーディング指揮、歌手はマエストリ、フリットリが揃い、カーセンの演出もお洒落だった「ファルスタッフ」、そしてもはや人間国宝と呼びたいレオ・ヌッチがアンコールまでたっぷり聴かせた「リゴレット」が忘れられません。新国立劇場では「タンホイザー」や無敵の定番「アイーダ」なども良かった。

加えてもう一つの記念イヤーが歌舞伎座新開場。怒濤のお名残公演から3年、社会現象レベルでお祭り気分が盛り上がった一方で、勘三郎、団十郎という大輪の華を失い、三津五郎、仁左衛門が病気療養、年末には福助まで倒れてまさかの襲名延期と、禍福あざなえる縄の如し。危機感が高まるなかで大奮闘の吉右衛門さん「熊谷陣屋」「石切梶原」、菊五郎さん「弁天娘女男白浪」が、ベテランらしく楽しませてくれた。2014年は菊之助、七之助ら若手の成長を応援するぞ!

演劇はたくさん観過ぎて、なかなかまとめきれないけれど、まずは別格の岩松了さん。「シダの群れ」なんと3作目は待望の阿部サダヲ、小泉今日子コンビが切なくて楽しくて、とても愛おしいシリーズになってきた。大好きな若手・前川知大はオリジナルの「片鱗」で、また演劇界中核の長塚圭史は三好十郎作「冒した者」で、いずれも震災後の社会の不透明さを鋭く描いていたと思う。前川くんは少々理屈っぽいけど、知的な戯曲と、感覚を刺激する演出で、どんどん見逃せない存在になってく感じです。
そしてタイプは違えど、いずれもエンタメ性が図抜けているお二人、まず巨頭蜷川幸雄は1月に狭心症の手術を受けたとは思えない活躍ぶりで、中でも「ヘンリー四世」のスケール感が印象的だったなあ。同じく息もつかせぬハードワークの三谷幸喜は、橋爪功と大泉洋のロナルド・ハーウッド作「ドレッサー」が秀逸だった。ご両人のあくなき創作欲、パワーにはとにかく脱帽。
俳優ではやっぱり宮沢りえが圧巻の活躍ぶり! 野田秀樹「MIWA」や蜷川さんの「盲導犬」、さらには私は見てないけど、三谷さんの「おのれナポレオン」で急遽代役までつとめちゃった。舞台女優として、すっかりワンランク上のポジションを確立しましたね。男優陣は蜷川さん「ヴェニスの商人」の市川猿之助、長塚さん「マクベス」の堤真一らがさすがの存在感だったし、いのうえひでのり「今ひとたびの修羅」などの小出恵介が案外、いい脇役になってきたのも、今年の発見です。来年もこうした劇作家、演出家、俳優さんに加えて、倉持裕、ケラリーノ・サンドロヴィッチらもウオッチしたいです… 忙しいなあ。はは。

さらに文楽では「心中天網島」をじっくり掘り下げた咲大夫・燕三コンビ、クラシックでは小澤アカデミーの「弦楽セレナーデ」に大感動。そして落語はやっぱり立川談春の「居残り佐平次」が色気たっぷりで充実してた! 喬太郎、三三、正蔵さんも聴き続けたいし、さあ、2014年も気合を入れて楽しむぞ〜。

立川談春「唖の釣」「芝浜」

立川談春独演会2013デリバリー談春「唖の釣」「芝浜」  2013年12月

2013年エンタメの大トリは楽しみにしていた談春さんで、デリ春シリーズでは5回目。年末休み入りとあって、17時からたっぷり3時間! 落語会としては若い人、女性が多くて浮き浮きした雰囲気だ。複合施設のなかのZEROでキャパ1300人の立派な大ホール、前寄り中央で3800円。なき談志の名演でも知られる、人情話の大ネタ「芝浜」で、充実の年忘れでしたぁ。

前座無しにいきなり談春さんが登場。ちょっと痩せたかな? 会場の「芝浜」への期待を敏感に察し、「独演会なのにアウエー」と表現。空気をほぐすように、まずは「唖の釣」で、はじけた与太郎を披露しました。
せっかちな江戸っ子にとって、馬鹿番付の東大関が釣人だった、というフリから、七兵衛と与太郎が殺生禁断の上野の池で、こっそり釣をする。役人に見つかったけど、与太郎は教わった通り、親孝行を言い訳にうまく許してもらう。続いて見つかった七兵衛は慌てて舌がもつれ、身振り手振りで必死の言い訳。許してもらって思わず「ありがとう」。与太郎でなく、ずる賢い七兵衛のほうがオチなんですね。

そのまま11月に開いた中村勘三郎追悼の会について、面白おかしいトークに突入。「赤めだか」に感動した勘三郎と出会い、さだまさし、志の輔とゴルフをして、さだがしゃべりまくり朝まで飲んだ、次は鶴瓶を加え5人で回ろう、「日本でならできる」と言ったけどそのままになったこと。1周忌の会のプロデュースに乗り出し、ゆかりの地・松本を選び、わざと日帰りしにくいスケジュールにして、渋る志の輔に「中村仲蔵」を50分で、と頼んだこと。当日、談春さんは噺を15分くらいで切り上げて、飛び入りの鶴瓶の「青木先生」が素晴らしかったこと、串田和美とのトークのあと、さだまさしがたっぷり語り、「精霊流し」で涙し、休憩もそこそこ、相当のプレッシャーのなかで志の輔が結局、80分熱演したこと。いや~、熱い思いが伝わってきましたぁ。

と、ここまでで1時間強。15分の中入りのあと、マクラなしで「芝浜」。亭主の勝が夜明けの浜で財布を拾う描写はなく、女房が朝ごはんを用意しているところへいきなり勝が帰ってくるバージョンです。また42両で浮かれてどんちゃん騒ぎをするくだりもなく、すぐに女房が再び勝を起こすシーンになって、テンポがいい。3年後の大晦日に女房が告白し、雪の日に体調を崩した自分を気遣ってくれたとき、嘘をつきとうそうと決意した、というあたりで涙…。勝は魚屋として腕がよく、女房は店を切り盛りする才覚があって、互いに認めあっている。夫婦の情愛だけでなく、そういう人生を支えていく庶民の気概が噺の芯なんだ、と感じられて爽やかです。やっぱり巧い。
終わっていったん下げた幕をあげ、袖から呼び出したのが、なんと三三さん、晩年の談志に稽古をつけてもらったという桂三木男、志らくのお弟子2人。「芝浜でなんでこんなに笑うのか」と師匠のような愚痴を言ったり、鈴本演芸場初席で大トリに抜擢された三三さんにやたらプレッシャーをかけたりしてから、手締めとなりました。最後にアナウンスでテレビの宣伝まで。23区をめぐるデリ春は3月で一区切りとなり、来年は主に地方で30周年だそうで、楽しみです。後輩や聴衆に対してお説教が増えてきた気がするけど、そのへんは立川流らしいのかな…

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METライブビューイング「ファルスタッフ」

METライブビューイング歌舞伎座新開場記念プレミア上映「ファルスタッフ」 2013年12月

2013-2014第4作、ヴェルディ晩年の大人の喜劇を、年末気分の歌舞伎座でのプレミア上映で。いつもの横長の舞台にスクリーンを設置、シチュエーションの独特の華やかさを満喫する。2階席の左端だったけど、スクリーン、音響ともそれほど問題はない。1・2幕と3幕の間に休憩を挟んで約3時間。冒頭、ピーター・ゲルブ総裁が歌舞伎座の観客向けに、日本語をまじえて特別に挨拶する映像があり、さすがサービスが行き届いてます。

上演日は12月14日。帝王ジェイムズ・レヴァインが、2シーズンぶりにピット復帰ということで、カーテンコールまで車椅子に座ったままながら、溌剌と指揮。客席は冒頭からすごい盛り上がりだ。プロダクションは私にとって2013年のハイライトだったスカラ座、そしてロイヤルオペラとの共同制作で、1950年代という設定のロバート・カーセン演出がポップ。METとしては半世紀ぶりの新制作だそうです。

タイトロールもスカラ座と同じ、この役を200回も歌っているという巨漢アンブロージョ・マエストリ(バス)。表情豊かで、とにかく食べまくる。聴衆のノリがよく、マエストリの巨大さや鹿の角をつけた登場シーンでの笑いが多くて、スカラ座のときよりさらに愉快だ。お楽しみの幕間インタビューでは、英語を理解しながらもイタリア語で通し、ファルスタッフ同様食べること、酒と女性が大好きとコメント。得意だというリゾットまでふるまって、イタリア歌手らしいなあ。
一方、METならではの米国勢で固めた女声陣も、マエストリに負けないパワフルさで、陽気。ファルスタッフをとっちめ、喜劇のキーとなるクイックリー夫人は余裕のステファニー・プライズ(メゾ)、アリーチェは期待の若手アンジェラ・ミード(ソプラノ)。娘ナンネッタと女房トリオのひとりメグ・ペイジは、ともにMETリンデマン養成プログラム出身で、おきゃんなリゼット・オロペーサ(ソプラノ)と、ちょっと控えめなジェニファー・ジョンソン・キャーノ(メゾ)。
ナンネッタの恋人フェントン役、パオロ・ファナーレ(テノール)が3幕のアリアをきめ、アリーチェの夫フォードのフランコ・ヴァッサッロ(バリトン)も達者だ。ラスト「人生みな冗談」のフーガまで、朗らかでいいテンポだ。

特典映像ではゲルブによるレヴァイン、カーセンの贅沢なインタビューがあり、「人間賛歌」や即興のように聴こえるメロディへの思い入れを熱く語る。小道具チーフ、生真面目そうなブルーメンフェルドさんがキッチンのシーンを解説するのも興味深い。ぶちまけられる小道具は数百もあり、ちゃんと焼き目がついてオーブンから出てくる七面鳥は本物、一方で古びた食品パッケージはロイヤルによる作り物だそうです。客席には加藤浩子さんがいらしてました~

 

SEMINAR

SEMINAR セミナー  2013年12月

テレサ・リーベックのブロードウェイ上演作を、芦沢みどり翻訳、栗山民也演出で。紀伊國屋ホールの左やや後方で7800円。年配の観客が多い。休憩無しの2時間弱。
作家志望の若者4人が、10週5000ドルで著名作家レナードの指導を受ける。レナードの容赦ない批評が4人の自意識を揺るがす一方、彼がこのところ小説を発表しなくなった事情が謎を呼ぶ。才能とか評価とか、出版ビジネスとかを巡ってシニカルなやりとりが続くけど、けっこう後味のいい大人のコメディだ。業の深い創造者同士の、激しいぶつかり合いとつながり。
4人が指導を受けるケイトの豪華アパートを数回の暗転でつなぎ、終盤はいったん幕を下ろしてセットをレナードの部屋に転じる。暗転前や幕切れに印象的なせりふがあって、鮮やかだ。

レナードの北村有起哉が相変わらずいい声で、長セリフも危なげなく色気を発揮。知的で痛烈な皮肉屋だけど、女好きの俗物でもあり、自ら心に傷を抱えつつ、若者に本音でぶつかっていく。格好いい役だなあ。紛争地帯とかに取材に行く設定がいかにもアメリカの作家っぽくて、部屋に世界各地の土産物が並んでいる造形も面白い(美術は松井るみ)。
若手4人もそれぞれ達者に、自負や傷つきやすさを表現。特にマーチンの玉置玲央が繊細さをみせつけていて、これからが楽しみな役者さんだ。育ちがよく、頭でっかちのケイト役、黒木華も存在感があり、オーディションだった「表にでろいっ!」から3年、ぐんぐん成長している感じ。応援したいなあ。セクシーでさばさばしたイジーに黒川智花、事情通っぽいダグラスに相葉裕樹。

DREAMS COME TRUE SPECIAL LIVE 2013

DREAMS COME TRUE NTV presents the Nestle Japan 100th Anniversary SPECIAL LIVE 2013~MADE OF GOLD~  2013・12

ネスレ日本100周年のイベントに行ってきた。紫と金のドレスの美和ちゃん、相変わらずのオーラで、楽しかったです。1万2000人収容の横浜アリーナのスタンド、ステージから遠いものの正面の席で6980円。女性グループや夫婦連れ、女性おひとりさまも。FUZZY CONTROLのオープニングアクトとMCが30分、本編が2時間弱。
吉田美和がマイクを握る右手の指にピンクの絆創膏らしきものを巻いていて、中村正人がなんと「昨日切って、7針縫ってます」とびっくりのコメント。そのせいか、新曲はちょっと不安定なところもあったけど、存分に歌って踊って、偉いなあ。バンドにホーンやダンサーを加えた編成。演出は照明だけ、後方のモニターに歌詞を映してました。

ラインアップはおなじみ「ダバダ~」をフィーチャーした「ネスカフェゴールドブレンド」CM曲などの新曲、「裏ワン」の大人っぽいダンスチューンに加え、嬉しい定番曲もたっぷり。「LOVE LOVE LOVE」をオリジナルに近い形で演奏するのは久しぶりだとか。大晦日の紅白で陸前高田から中継するのを意識したのか、涙腺にじんとくる応援歌が多かった気がする。アンコールで、来年はデビュー25周年のツアーがあると予告。楽しみですね~
以下はセットリストです。

1.MADE OF GOLD featuring DABADA
2.大阪LOVER
3.SWEET REVENGE
4.嵐が来る
5.さあ鐘を鳴らせ!
6.空を読む
7.サンキュ
8.i think you do
9.愛がたどりつく場所
10.想像を超える明日へ
11.朝がまた来る
12.何度でも
13.この街で
14.Winter Song dancing snowflakes version

EC1.LOVE LOVE LOVE
EC2.うれしい!楽しい!大好き!

文楽「大塔宮曦鎧」「恋娘昔八丈」

第一八五回文楽公演「大塔宮曦鎧」「恋娘昔八丈」  2013年12月

2013年の文楽納めは珍しい2演目で、エンタメ性が高い。国立劇場小劇場、後ろの方右端で5700円。左側の字幕が遠く、手元で床本を確認しながら鑑賞した。休憩を挟んで4時間。

1演目目は「大塔宮曦鎧(おおとうのみやあさひのよろい)」約120分。太平記に登場する後醍醐天皇の皇子、大塔宮による鎌倉幕府打倒の闘いを描く時代物の三段目。野澤錦糸復曲、山村若振付でなんと121年ぶりの上演だ。スケールの大きい古典の復活事業。歌舞伎でも40年くらい上演していないそうです。灯籠の道具立てが風流で、ダンスシーンが秀逸。
まず六波羅館の段は奥で咲甫大夫、清友さんが聴かせる。後醍醐天皇の寵妃・三位の局(勘弥)が鎌倉サイドである常盤駿河守(玉也)の気を引いて、流刑となった後醍醐の帰還を目指すものの、無骨な忠義者・斉藤太郎左衛門(勘十郎さん、左は幸助さん)が企みを喝破。トンデモ駿河守は切子灯籠に託して、後醍醐の幼い若宮(玉翔)を斬っちゃえ、と命じる。その俗物ぶりを軽蔑しつつも、主従の筋を通そうとする太郎左衛門の苦衷を、勘十郎さんが毅然と。
続く身替り音頭の段の奥は文字久大夫、そして錦糸さんが激しい弾きっぷりで、掛け声も大きく、気合い十分だ。灯籠が下がり、子らの小さな手が舞って、鎮魂と恍惚の雰囲気が幻想的。物語は後醍醐サイドの永井右馬頭(玉女)と妻(和生)が若宮を救うため、我が子鶴千代(玉誉)を差し出す。「満仲(まんじゅう)」の逸話が語られるなか、忠義と正義の板挟みにあった太郎左衛門は、なんと自らの孫・力若丸(勘次郎)を斬ってしまう。身替りの身替り、しかも忠義一辺倒ではない。哀しくも壮絶な幕切れだ。

休憩後はがらりと雰囲気が変わって「恋娘昔八丈」。珍しい江戸の世話物で、初演当時大ヒットしたとか。城木屋の段では千歳大夫さんがはまり役のチャリ場を熱演。老舗材木屋の娘・お駒(清十郎)の恋人・才三郎(文司)は、髪結いに身をやつして盗まれた家宝の茶入れを探している。お駒は父(玉輝)の頼みで、金を貸してくれた喜蔵(玉志)と祝言をあげる羽目になっている。随所に江戸情緒が漂い、お駒に気がある番頭丈八(蓑二郎、左は幸助さん)の見当違いの言動がいちいち可笑しい。
クライマックスの鈴ヶ森の段は呂勢大夫、藤蔵。呂勢さんは朗々としているけど、もう少しゆとりがあってもいいかな。物語は、はずみで夫・喜蔵を殺してしまったお駒が、刑場にひかれてくるハイライトシーン。黄八丈に水晶の数珠、縛られているので手の動きがなく、肩だけで演じるクドキがなんとも色っぽい。あわやというところで才三郎が丈八を引っ張ってきて、茶入れを盗んだ喜蔵、丈八の悪事を暴露し、めでたくお駒も許されちゃう。世話物には珍しいハッピーエンドで、痛快でした。

マクベス

シアターコクーン・オンレパートリー2013「マクベス」  2013年12月

イギリス留学を経た長塚圭史が、シェイクスピア初挑戦で話題の舞台。しかもマクベスに初顔合わせの堤真一、マクベス夫人に妻の常盤貴子、さらに暗殺されるダンカン王・中島しゅう、バンクォー・風間杜夫、マクベスを追いつめるマクダフ・白井晃ら、実力派をずらりと揃えた。六角形のステージを客席がとり囲み、俳優が通路やステージの下から出入りして場面を転換していく、知的な構成。1F後ろ寄りで9500円。休憩を挟んで3時間弱。

セットはなく、嵐などの音響と照明のシンプルな構成で緊張感がある。衣装はスーツにネクタイ、ジーンズ、トレンチコートなどと現代風に一部甲冑がまざり、部分的に白塗りのメイクがちょっと不気味。
客席にあらかじめ緑のビニール傘が配られ、冒頭、従者シートンの市川しんぺー、マクダフの息子などの福田転球が使用法を解説する。途中から客席に溶け込んでいた魔女の三田和代、江口のりこ、平田敦子がヤジり、流れるように「きれいは汚い…」の有名な荒野のシーンが始まる。さらに傘、そして意表をつく巨大な首の登場と、観客を巻き込む仕掛けが随所に。6月の白井晃「オセロ」でもちょっと感じたけれど、スターに道を誤らせるのは実は無責任な大衆の目、というイメージかな。

堤と常盤は権力欲にまみれた悪人というより、虚栄と猜疑心から次々に罪を重ねてしまう弱さ、幼さが印象的だ。特に堤が、詩的な長ゼリフをしゃべりまくり、うろうろと歩き回り、ラストは自分の死が理解できていないような戸惑いの表情をたっぷりみせる。なんとも切なくて、普遍的な人間の愚かさをくっきりさせる。
マクベスと敵対するロスの横田栄司が、吉田鋼太郎ばりでいかにもシェイクスピア俳優らしく、逆にダンカン王の息子マルカムの小松和重や、レノックス役、ペンギンプルペイルパイルズでお馴染みの玉置孝匡は普通っぽくて、それぞれにいい味。ほかにヘカテに存在感たっぷりの池谷のぶえら。

私のような素人でも、断片的に聞いたことがあるセリフがたくさんあるのは、さすが3大悲劇だなあ。翻訳はいつもの松岡和子さん。

松任谷由実コンサートツアー2013-2014

松任谷由実コンサートツアー2013-2014  2013・12

37枚目のアルバム「POP CLASSICO」をひっさげ、8カ月続く2年ぶりのツアー。40年前のデビュー日11月21日に、アルバムリリースとツアー初日を重ねた。年配の夫婦連れが多い。東京国際フォーラムホールA、2F中央で8400円。約2時間半。
今回の重要ポイントは、とにかく映画みたいなエンドロールが流れても絶対帰らないこと! (以下はネタバレですので注意してください)

ひときわ名曲が詰まった、ヨーロッパの香りがするポップ、というアルバムの雰囲気そのままのステージだ。ユーミンは高音がところどころ辛そうではあったけど、珍しい古めの曲もまじえて、じっくりと聴かせる。演出はお洒落だし、名曲に何度もじ~んとして、大満足でした!

おおまかに4つのパートがあり、冒頭は2階建てのセットからユーミンが宙乗りで降りてくる。背景にたなびく紗幕。アルバムジャケット(アートディレクター森本千絵)そのままの「風船ドレス」でぴょんぴょん跳ねるのが可愛く、暗転すると金のタイツ姿に。
背景が高窓に替わってからは、ユーミンの動きに合わせた巨大な人影や湖の映像、炎、滝などのプロジェクションマッピングが美しい。ユーミンは古風な赤いチェックのドレスで、正調ユーミン節「Hello, my friend」「シャンソン」などでたっぷり泣かせる。途中でバンドメンバーが「Isn't she lovely」を歌ったり、ギターとベースの見事なアンプラグドで聴かせたり。
後半は2階建てセットに戻って、雲やイルカの映像をバックに青い衣装、ラストはモノトーンのパンツスーツで颯爽と。サングラスをかけたりして、「WANDERERS」あたりから終盤は、ガンガン盛り上がっていく。
アンコールでは黒のタキシードに替わり、バックに子供時代の白黒写真が次々と流れて、ラストは今年、宮崎アニメの主題歌になった「ひこうき雲」。感動! これが高校生次代の作だなんて、改めてその才能に驚く。クレジットが流れていったん場内が明るくなるけれど、なんのその。止まない拍手にこたえて再登場! キーボードだけで一曲。このお楽しみは会場によって曲が違うようです。40年のキャリアと比類ないセンス、「今を受け入れてくれて有り難う」という言葉がしみました。

演出はもちろん松任谷正隆、音楽監督とキーボードは武部聡。バンドは若手を迎えたそうで、ギター遠山哲朗がいい。ベースは須長和広、パーカッション小野かほり、ドラム加藤久幸、サクソフォンその他は伊勢賢治、コーラスとギターは今井マサキ、コーラスに松岡奈穂美、須藤美恵子。衣装は篠原ともえデザイン、ディレクターが金澤見映。アナログアルバム大で、飛び出す絵本になっているプログラムが楽しい。セットリストは以下。

1,Babies are popstars
2,ミラクル
3,無限の中の一度
4,今だけを きみだけを
5,雨のステイション
6,NIGHT WALKER
7,経る時
8,Hey girl ! 近くても~一緒に暮らそう~彼から手をひいて~Hey girl ! 近くても
9,Hello, my friend
10,シャンソン
11,雨に願いを
12,Nobody Else
13,LATE SUMMER LAKE
14,Delphine~MODELE~Delphine
15,Miss BROADCAST
16,WANDERERS
17,Discotheque
18,青春のリグレット 
19,Laughter

EC1, 愛と遠い日の未来へ
EC2,14番目の月
EC3,ひこうき雲
EC4,卒業写真

トリノ王立歌劇場「トスカ」

トリノ王立歌劇場「トスカ」 2013年12月

2013年オペラ納めはトリノ歌劇場の最終日。引っ越し公演2作目で、プッチーニの名曲ぞろいの濃密なドラマだ。東京文化会館大ホール、中央あたりで4万1000円。客席にはいつになく、気合いの入ったお洒落さんが多かったような気がする。1幕のあと30分の休憩を挟み、2、3幕という構成で計約2時間半。

ノセダ指揮のオケは相変わらずゆったりとパワフル。歌手が負けずに滑り出しからパワーを発揮して、聴き応えがありました! 画家で正義の騎士カヴァラドッシはアルゼンチン出身のマルセロ・アルヴァレス(テノール)。1幕の「妙なる調和」から3幕の「星は光りぬ」まで、アリアがつややかだ。対する希代の悪役・警視総監スカルピアのラド・アタネリ(バリトン)はグルジア生まれ。「行け、トスカ」など、豊かな声でなかなかの色悪ぶりを見せた。
タイトロールはフリットリが「芸術上の理由」で早々に降板し、今シーズンのMETでも起用されているアメリカ出身のパトリシア・ラセット(ソプラノ)。「歌に生き、恋に生き」る華麗な歌姫というより、ちょっと女将さん風だったけど、迫力は十分。牧童の阿部昇真くんや合唱でTOKYO FM少年合唱団が活躍し、1幕のカーテンコールでは指導の女性も登場してましたね。

2012年11月に新国立劇場でこの演目を観たときは「デ・デウム」などが金ぴかで絢爛豪華だったけど、今回のジョアン・ルイ・グリンダ演出は現代的で、割とシンプル。いきなりラストシーンの映像から始まり、すべてが死を目前にしたトスカの回想という設定なのかな。
2幕のカンタータはオフステージではなく、背後の紗幕ごしにトスカが歌う。大詰めではセットが大きく回って、巨大な壁の前の主役2人にスポットライトが当たるなど、物語の構図がわかりやすい。トスカがスカルピアに蝋燭をたむける仕草を省いたのは、激しい怒りを重視しているからかな。

カーテンコールでは舞台上部のスクリーンに劇場の写真などを映し、オケやスタッフら大勢が舞台に並んで、お約束の大団円。今年のオペラ体験も楽しかったです!

トリノ王立歌劇場「仮面舞踏会」

トリノ王立歌劇場「仮面舞踏会」  2013年12月

ヴェルディイヤーのラストを飾る、イタリアからの名門引っ越し公演1作目。ロビーのノベルティ売り場でチョコを購入。衣装の展示もあって楽しい。東京文化会館大ホール、1F中央のいい席で4万1000円。30分の休憩1回を含め3時間。

音楽監督ジャナンドレア・ノセダの指揮は流麗。ご本人は元気いっぱいで動きも激しい。1幕は初日とあって歌とオケのバランスや、テーブルに乗ったり、傾いた床を歩いたりという段取りがややもたついたけれど、休憩を挟んで3幕からは全体に調子があがり、美しく劇的な旋律を楽しめた。
1月のMETライブビューイングで観たこの演目は、原作通りスウェーデン王グスタフ3世を主役にしていたが、今回は実在の事件に配慮した初演時の設定で、イギリス植民地時代のボストンが舞台。総督リッカルド(ラモン・ヴァルガス、テノール)、秘書レナート(ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ、バリトン)、その妻アメーリア(オクサナ・ディカ、ソプラノ)の三角関係が招く、総督暗殺の悲劇だ。
ヴァルガスはでだしで声の迫力が今ひとつかと思ったけど、安定しており、3幕の「永遠に君を失えば」あたり、さすがに聴かせた。イケメンのヴィヴィアーニに艶があり、「お前こそ、わが魂を汚すもの」で怒りの旋律をたっぷりと。忠実で頼れる左腕として登場し、不倫を確信してからは巨大ベッドで妻をなじり、グラスを投げて荒れまくる。この振り幅の大きさは、得な役だなあ。ウクライナ出身の新星ディカはちょっと東洋風の美形でかなりの大柄、声もなかなかパワフル。占い女ウルリカが新国立劇場で何度か観ているマリアンネ・コルティ(メゾ)で、1幕2場しか登場しないし、動きが激しくて大変そうだけど、抜群の貫録で存在感があった。軽快な歌が多い小姓オスカル役で、オーディションで選ばれたという小柄な市原愛(ソプラノ)が健闘。

ロレンツォ・マリアーニの演出は、冒頭の銃を構えた敵対貴族たちの登場から、陰影が濃く不穏な空気を漂わせて文学的。装置はシンプルだが、モノトーンと銀を基調に、アール・デコ調の衣装、ティアラや真珠を散りばめてスタイリッシュだ。テーマの赤の差し色が効果的。大詰めの舞踏会シーンでは一転、天井からテープと紙吹雪が舞い、壮麗な赤が舞台を埋め尽くす。鮮やかだなあ。全体に拍手が早いのがちょっと気になったけど、盛り上がった舞台でした。

モモノパノラマ

マームとジプシー11月12月公演 モモノパノラマ 2013年11月

いま最も注目されるという1985年北海道生まれの新鋭・藤田貴大が作・演出。客席には蜷川幸雄さんの姿も。KAAT神奈川芸術劇場の大スタジオで、四角いスペースを客席が取り囲む、親密な雰囲気だ。自由席で3000円。休憩無しの1時間半。

愛猫の死や、幼いころ衝撃を受けた事件をモチーフに、日常のすぐそばにある死の意味を考える。登場するのは田舎町に暮らす姉(はきはきした成田亜佑美)、妹(しなやかな吉田聡子、モモ役も)、友人たち(作者らしき演劇青年の尾野島慎太朗ら)で、大人はいない。思春期独特の傷つきやすさ、未熟さが全編を覆い、みずみずしく、愛おしく、そしてこそばゆい。
なにげない友との会話、もらい手のない仔猫を川に流してしまったことや友人の自殺といった短いシーンを、角度をかえて何度も繰り返す。記憶の断片を反芻して、あれはいったいどういう意味だったのかと考え続けている。そんな作家の脳内を覗き見る印象だ。6月の岩井秀人「て」にも通じる感覚。特別な意味などまとわずに「ただ生きた」猫のモモが、よろよろ歩きながら最期を迎えるところで、すすり泣く観客も。可愛いなあ。

何もない空間に並んだシンプルな白木の枠を、俳優たちが自在に組み立て、家や車にみたてていく幾何学的趣向が面白い。さらに俳優は朗読みたいにセリフを口にしながら、終始動いている。木枠をくぐり、梯子を登り、女優が男優に支えられて飛翔し、皆で縄跳びする。新体操をみているように緻密な構成できびきびしていて、目が離せない。特に女優陣が個性的です。
かといってスタイリッシュ過ぎることはなく、姉妹が喧嘩してじゃれ合うあたりに、エロティックが漂うのも巧い。セリフの聴き取りにくいところがあったのが、少し残念だったけど。出演はほかに伊東茄那、荻原綾、川崎ゆり子、召田実子、石井亮介、中島宏隆、波佐谷聡。
冊子のプログラムはなくて、チラシになぜかポプリがついてました。終演後、ロビーで蜷川さんと話す藤田くん、若くてイケメンだなあ~

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