2013年喝采づくし
振り返れば2013年も大充実の喝采づくしでした。なんといってもヴェルディ、ワーグナーのダブル生誕200年という記念の年。にわかヴェルディ派としては、ハイライトは名門ミラノスカラ座の来日公演かなあ。ハーディング指揮、歌手はマエストリ、フリットリが揃い、カーセンの演出もお洒落だった「ファルスタッフ」、そしてもはや人間国宝と呼びたいレオ・ヌッチがアンコールまでたっぷり聴かせた「リゴレット」が忘れられません。新国立劇場では「タンホイザー」や無敵の定番「アイーダ」なども良かった。
加えてもう一つの記念イヤーが歌舞伎座新開場。怒濤のお名残公演から3年、社会現象レベルでお祭り気分が盛り上がった一方で、勘三郎、団十郎という大輪の華を失い、三津五郎、仁左衛門が病気療養、年末には福助まで倒れてまさかの襲名延期と、禍福あざなえる縄の如し。危機感が高まるなかで大奮闘の吉右衛門さん「熊谷陣屋」「石切梶原」、菊五郎さん「弁天娘女男白浪」が、ベテランらしく楽しませてくれた。2014年は菊之助、七之助ら若手の成長を応援するぞ!
演劇はたくさん観過ぎて、なかなかまとめきれないけれど、まずは別格の岩松了さん。「シダの群れ」なんと3作目は待望の阿部サダヲ、小泉今日子コンビが切なくて楽しくて、とても愛おしいシリーズになってきた。大好きな若手・前川知大はオリジナルの「片鱗」で、また演劇界中核の長塚圭史は三好十郎作「冒した者」で、いずれも震災後の社会の不透明さを鋭く描いていたと思う。前川くんは少々理屈っぽいけど、知的な戯曲と、感覚を刺激する演出で、どんどん見逃せない存在になってく感じです。
そしてタイプは違えど、いずれもエンタメ性が図抜けているお二人、まず巨頭蜷川幸雄は1月に狭心症の手術を受けたとは思えない活躍ぶりで、中でも「ヘンリー四世」のスケール感が印象的だったなあ。同じく息もつかせぬハードワークの三谷幸喜は、橋爪功と大泉洋のロナルド・ハーウッド作「ドレッサー」が秀逸だった。ご両人のあくなき創作欲、パワーにはとにかく脱帽。
俳優ではやっぱり宮沢りえが圧巻の活躍ぶり! 野田秀樹「MIWA」や蜷川さんの「盲導犬」、さらには私は見てないけど、三谷さんの「おのれナポレオン」で急遽代役までつとめちゃった。舞台女優として、すっかりワンランク上のポジションを確立しましたね。男優陣は蜷川さん「ヴェニスの商人」の市川猿之助、長塚さん「マクベス」の堤真一らがさすがの存在感だったし、いのうえひでのり「今ひとたびの修羅」などの小出恵介が案外、いい脇役になってきたのも、今年の発見です。来年もこうした劇作家、演出家、俳優さんに加えて、倉持裕、ケラリーノ・サンドロヴィッチらもウオッチしたいです… 忙しいなあ。はは。
さらに文楽では「心中天網島」をじっくり掘り下げた咲大夫・燕三コンビ、クラシックでは小澤アカデミーの「弦楽セレナーデ」に大感動。そして落語はやっぱり立川談春の「居残り佐平次」が色気たっぷりで充実してた! 喬太郎、三三、正蔵さんも聴き続けたいし、さあ、2014年も気合を入れて楽しむぞ〜。