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ザ・スーツ

パルコ劇場40周年記念公演「ザ・スーツ」  2013年11月

シンプルだけど含意の深い、同時に歌や笑いでしっかりエンタテイメント性もある舞台を観た。もとになっているのは南アフリカ出身の黒人作家キャン・センバが、1950年代に書いた短編。モトビ・マトローツ、バーニー・サイモンの原作に、イギリスの巨匠ピーター・ブルック、長年の制作パートナーであるマリー=エレーヌ・エティエンヌが演出・翻案・音楽、さらに作曲家フランク・クラウクチェックという「魔笛」チームが揃った。パルコ劇場前のほう中央といういい席で8400円。お洒落な年配のひとり客が目立つ。約1時間15分。

物語は大人の寓話のように語りだされる。アパルトヘイト下のヨハネスブルグ郊外・黒人居住区に住むフィレモンは、妻マチルダの不倫に深く傷つき、浮気相手が残したスーツを客として扱う罰を与える。マチルダは地域活動や、才能ある歌に救いを求めるが、スーツを食卓にかけさせ、散歩に持ち歩く奇矯な行動を執拗に強いられて、自尊心を失っていく。精神の抑圧という残酷さ、罪深さが様々な差別と重なる普遍的な悲劇。

椅子数脚とテーブル、パイプハンガーで寝室やバス車内などを自在に表現、登場するのは俳優4人とミュージシャン3人(アコースティックギター、キーボードとアコーディオン、トランペット)だけ。知的だけど、気取ってはいない。どこかのジャズクラブにいるように女優が歌い、ホームパーティーの場面では観客を舞台にあげちゃったりして、意外に親密で素朴な手触りだ。日本語を織り交ぜ、ユーモアも随所に。
マチルダ役のノンランラ・ケズワが力強く、ニーナ・シモンのジャズ「フィーリング・グッド」などを達者に歌う。南ア出身のミリアム・マケバがヒットさせたというタンザニア民謡「マライカ」が胸にしみたなあ。終盤、ビリー・ホリディの「奇妙な果実」も重く哀しい。スーツの片袖に腕を通して踊るシーンは色っぽいし。ほかにシューベルトやバッハ、「禁じられた遊び」など耳慣れた曲も登場。
舞台上部に字幕付き。岡本健一さんが来ていたらしいです。

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