歌舞伎「義経千本桜」
歌舞伎座新開場柿葺落「芸術祭十月大歌舞伎」夜の部 2013年10月
新開場も仕上げの秋となり、大作の通しシリーズに突入。まずは「義経千本桜」です。1Fほぼ中央のいい席で1万8000円。仁左衛門、菊五郎のベテランお二人を堪能する。相変わらず観客の華やかな雰囲気が楽しいけれど、幕切れはちょっと空席が目立って残念かな。
夜の部は四幕目からで、原作の三段目にあたる「木の実、小金吾討死」。平維盛を尋ねて旅する若葉の内侍(東蔵)と若君、供の小金吾(梅枝)が木の実を拾う和やかな場面から、いがみの権太(仁左衛門)の騙りへ。権太は楽しみにしていた上方流だそうで、チャーミングでセリフが文楽っぽい。権太が小金吾を足で止めるシーンは、不調の肩のせいか、なかなか大変そうだったけど。後半は小金吾の縄を使っての立ち回り。花形の梅枝さんは声がいい。
休憩を挟んで渋い「すし屋」。導入部分は弥助、実は維盛(りりしく時蔵)と お里(孝太郎)が夫婦のやり取りを稽古して微笑ましい。権太が母(竹三郎)の膝枕で金をせびるところまでは、コミカルだ。弥左衛門(歌六に重みがある)が帰宅し、武将らしくなる維盛の変化、お里のクドキと続き、権太がいったん伏線となる寿し桶を抱えて花道を引っ込む。
梶原景時(我當)が重々しく登場してからは、雰囲気が変わって怒濤の展開だ。緊迫の首実検に続き、権太が涙をこらえて女房小せん(秀太郎が上品)と息子を身代わりに差し出すシーンで、たっぷり泣かせる。
弥左衛門に刺されちゃってからは、モドリの長セリフで舞台を牽引。頼朝が陣羽織で温情を示し、維盛が出家しちゃうのは、文楽を含め、何度観てもあんまりだなあ、思うけど。
休憩でお弁当をつつき、いよいよ大詰「川連法眼館」通称「四の切」。前の歌舞伎座さよなら公演でも観た菊五郎さんの音羽屋型です。猿之助襲名公演で観た澤瀉屋型と比べると、宙乗りなどケレンは少ないけれど、忠信の菊五郎さんが体を張って大活躍だ。
前半は義経(梅玉)と静御前(時蔵が品良く)に対し、袖を広げてみせる決まりなど。後半、源九郎狐に変身するところからは、早替りや「狐詞」、ラストは吉野の悪僧を翻弄し、初音の鼓を抱えて木に登り、幕となりました~
仁左衛門、菊五郎とも年齢は隠せないけれど、存在感と、何とも言えない愛嬌がさすがです。ベテランが次々に欠け、仁左衛門さんまで手術で来月から降板という事態。なんとか花形に踏ん張ってほしい!
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