MIWA
NODA・MAP第18回公演「MIWA」 2013年10月
作・演出野田秀樹。東京芸術劇場プレイハウス、左寄りの席で9500円。ファンタジックな設定が面白い野田さんが、実在の人気者・美輪明宏78歳をモチーフに選んだ異色作とあって、老若男女幅広い演劇好きに、美輪ファンらしい女性も加わり、満席だ。休憩無しの2時間強。
MIWAも野田さんも長崎の出身。隠れキリシタンの歴史や、MIWAの圧倒的な被爆体験をベースに、昭和の香り、そして逞しい人間肯定のパワーを綴っていく。
劇中劇のスタイルをとり、シンプルな枠組みと椅子、大きな布などを使って、浦上天主堂や原爆投下前後の街、華やかな銀巴里を自在に表現。時間軸が前後する目まぐるしい展開や、「もう、そうしよう、妄想しよう」といった言葉遊びも健在だ。ただ決めどころでは美輪本人が歌う「愛の賛歌」「ヨイトマケの唄」が大音量で流れて、どうしても意識が現実に引っ張られる。前向きなメッセージが強い分、野田さんらしい意表を突くイメージの飛翔とか、ヒリヒリする切迫感とかはちょっと物足りないかな。
俳優陣ではタイトロールの宮沢りえが、期待通りに舞台を掌握。ほぼ出ずっぱり、細身を青い衣装に包み、前半の悩み多い学生服の少年から、後半はドレスが華麗な美青年へと見事に変身する。一貫して声がよく通り、存在の透明感が凄い。
周囲も豪華キャストで、いわば番頭格の古田新太はMIWAの内面に宿る両性具有のアンドロギュノス、転じて「安藤牛乳」を、美輪さん風の金髪、ピンクのドレスでギャグをまじえつつ、楽々と演じる。余裕です。
花街で弱者をかばい続けた継母マリアの井上真央が、なかなか達者。恋人で夭折した映画スター赤紘繋一郎は、瑛太が繊細に。野田秀樹は何故か「ドリアングレイ」や「ベニスに死す」を思わせる肖像画を背負ってたり、三島由紀夫をなぞったりして、相変わらずの相当な運動量だ。無節操な大衆を思わせる小出恵介と、父や銀巴里オーナー役の池田成志が舞台回しを引き受け、ボーイの浦井健治がはかなげ。小出クンは意外にいい脇役になってきたなあ。唐突にキューバに行くと宣言する青木さやかが、随所で笑いをとって奮闘。映画館シーンの声ではなんと天海祐希、柄本明、大竹しのぶ、橋爪功、美波が登場。いやー、贅沢でした~
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