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ミラノ・スカラ座「ファルスタッフ」

ミラノ・スカラ座「ファルスタッフ」  2013年9月

ヴェルディイヤーもいよいよ佳境。お膝元の引っ越し公演で、大作曲家80歳の最後のオペラを鑑賞。スカラ座は1893年の初演の劇場という縁なんですね。ホワイエに着飾った若い女性が目立ち、華やかな雰囲気だ。東京文化会館、1F中央あたりのいい席で6万2000円。30分の休憩を挟んで3時間弱。

シェイクスピア「ウィンザーの陽気な女房たち」を原作に、お馴染み太っちょ騎士のファルスタッフが、金目当てで貴婦人を誘惑するものの、こっぴどくお灸をすえられる物語。とはいえ若い恋人たちの結婚を手助けし、「世の中すべて冗談!」とご満悦で幕を閉じる。壮麗なアリアはないけれど、シニカルさや哀愁がにじみ、自作のパロディといった遊び心もある大人の喜劇です。
若手指揮者のダニエル・ハーディングが、きびきびとキレが良くて好印象。カーテンコールでは悪戯っぽく、五輪開催決定を祝う幟を持ち出してました。大震災を経験した彼だからこその感動がありました。
英国ロイヤル・オペラ、メトロポリタン・オペラとの共同新制作となったロバート・カーセンの演出は、1950年代英国の設定でとてもモダンだ。1幕1場のガーター亭はホテルの一室で、食い散らかしたルームサービスのテーブルが並び、2場のレストランでは夫人たちが着飾っていて、人物の出入りがリアル。続く2幕1場は同じガーター亭でもオーク材の壁の重厚なラウンジで、ファルスタッフの赤い狩猟ジャケットが鮮やか。2場のパステルカラーがスカッと明るいアリーチェのキッチンが特に出色で、合唱とのドタバタ追いかけっこが楽しい。
休憩を挟んだ3幕1場はガーター亭の外。飼い葉をはむ馬に愛嬌があり、深夜の森の2場は鹿の角の影が幻想的。一転してシャンデリアが灯る長テーブルでの祝宴になだれ込み、ラストは客席を明るくして「あなたの話ですよ」と指さす趣向。蜷川さんなら鏡を持ち出すところですね。

歌手陣はさすがに粒ぞろいで、何と言ってもタイトロールのアンブロージョ・マエストリ(バリトン)が、「行け!年老いたジョン」などの声量とリアルな巨漢ぶりが極めつけ。ごめんくださいませ、と近寄って彼を罠にかけるクイックリー夫人のダニエラ・バルチェッローナ(メゾ)も、お茶目で負けていない。フォード夫人・アリーチェのバルバラ・フリットリ(ソプラノ)は相変わらず優雅。娘ナンエッタのロシア出身イリーナ・ルング(ソプラノ)と恋人フェントンのアントニオ・ポーリ(テノール)が、3幕で伸びやかなアリアを聴かせて楽しみだ。ポーリはちょっと高音が苦しい場面もあったけれど。嫉妬に燃えるフォードのマッシモ・カヴァレッティ(バリトン)、小柄なメグのラウラ・ポルヴェレッリ(メゾ)らも不安がなく、重唱が生き生きとして聴き応えがありました。
客席には財界人やエコノミストも大勢。あ~、楽しかった!
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