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悪霊-下女の恋-

M&O playsプロデュース「悪霊-下女の恋-」  2013年8月

作・演出松尾スズキ、1997年初演作の再々演だ。客席は男性が目立つ。本多劇場、右寄りの席で6500円。2時間強。

コンプレックスや恨みと、隠された本音。これぞ松尾ワールドって感じでしょうか。大阪のどこか、昭和な縁側がある一軒家のワンセットで、芸人のタケヒコ(三宅弘城)と口うるさい母(広岡由里子)、若い婚約者(平岩紙)、色男で幼なじみの相方ハチマン(賀来賢人)、そして母の死後に現れる謎めいた家政婦(広岡の2役)が、不幸な事故や不倫などをきっかけに、いびつな人間関係を展開する。

異母兄弟とか、父の死と母の愛憎、そして学生時代のイジメ。2重3重の伏線がある緻密な戯曲だけど、そういうストーリーよりも、詰め込まれた毒のあるギャグ、ベタな笑いの印象が強かったかな。庭にいると聞こえてくる近くの学校放送の、妙に劇的なレミゼラブルとか…

初演から出演の元東京乾電池・広岡さんが、個性的で怪演。仕切屋で、やたらヘリを飛ばしちゃう母、そしてミュージカルばりに踊ったり、シーツかぶったり、不気味に快活な家政婦と、やりたい放題だ。それに比べると三宅さんは、屈折した役柄の割に生真面目で毒が薄め。歌もうまいし。したたかな妻の平岩さんに独特の透明感があり、若い賀来くんはけっこう達者に、もてる男のいい加減さを出していて楽しみな役者さんだ。平岩さん以外は関西弁がちょっと落ち着かなかったかも。

ドリームガールズ

ブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」  2013年8月

2010年にオーチャードホールで観た演目の再来日。シアターオーヴの通路前中央で1万2500円。渋谷の景色が一望できる広いホワイエ、お洒落した聴衆がいい雰囲気だ。
前回はなんと最前列で、歌がド迫力だった。今回は全体を見渡せるとてもいい席。テレビスタジオなどのLED映像を多用し、テンポがいいショーアップされたミュージカル全体を存分に楽しんだ。

もちろん魅力はやっぱり歌。要のエフィーはリディア・ワーでセカンドキャストだったけど、堂々たる体格で失意の「And I am Telling You I'm not Going」、再起を決意する「I am Changing」をたっぷり歌い上げ、クライマックス、夢に向かって歩くことを説く「Listen」ではもう大感動でした! 悪態をつく大げさな演技も愛嬌たっぷり。
ローレルのトーニャ・マリー・ルー、弟CCのテレンス・ジョンソンが声がのびて目立ってましたね。サンダー・アーリーのケルヴィン・ロストンJrは、ハスキーながらコミカルで味がある。ディーナのジャズミン・リチャードソンは、すらっとした体型が役に合っているものの、相対的に歌は不安定だったかな。

曲が滑り出しの重いソウルから、徐々にポップになっていき、それと共にガールズがぐんぐん、あか抜けていくのが面白い。スパンコールてんこ盛りのキンキラ衣装は好きです。舞台袖のモニターに指揮を映し、バンドは別室に控えていて、最後に舞台スクリーンの映像で紹介するスタイル。カーテンコールはカメラ撮影OKのサービスがあった。もうちょっと盛り上がりたかった感じは残るけど、楽しかったです!

歓喜の歌

劇団姦(かしま)し第2回公演「歓喜の歌」  2013年8月

作・演出赤堀雅秋。久しぶりの、とっても小さい下北沢ザ・スズナリで、前方3列の背もたれのない自由席。3500円だ。早めに到着して右端を確保。若い人だけでなく、中年夫婦連れなんかも目立つ。思いがけず終演後に赤堀さん、大好きな倉持裕さん、大物・長塚圭史さんという豪華トークショーがあり、とってもお得でした。

お話はとても巧い。食品工場の同僚である女性3人が、どういうわけか突発的に旅に出て、観るべきものもない片田舎の民宿で1泊する、ただそれだけ。じりじりする夏の日差し、焼きそばとビール、無駄に時間が過ぎていくカラオケスナック、聞こえない鯨の歌、いろんな後悔と諦め。長塚さんはつげ義春を思わせると言ってたけれど、ほかには小津安二郎とか、淡々として会話が自然で、人生の陰影がゆっくり胸に染みてくる。
ユニットはあめくみちこ(東京ヴォードヴィルショー)、かんのひとみ(道学先生)、那須佐代子(元青年座)が赤堀作品上演のために立ち上げたそうで、呼吸が絶妙だ。ズケズケものを言う女優役の那須にムードがあり、客演では困ったおばちゃんだけどシェイクスピアを暗誦しちゃう倉野章子(文学座)が存在感たっぷり。池津祥子(大人計画)、日比大介(THE SHAMPOO HAT)もうまく笑わせる。
トークショーは特にテーマもなく、注目の劇作家3人がうだうだと。暗転時の歌のこととか、美術の中根聡子さんの青とか、劇団とユニットの話とか。終わって狭いロビーで那須さんが友人らしい人と語り合ってたり、出たところでトークの3人が煙草吸ってたり、アットホームでした~

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