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わが闇

結成20周年記念企画第三弾ナイロン100℃40th SESSION「わが闇」  2013年7月

作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ、2007年初演の家族劇を再演。客層は若めで小綺麗だ。本多劇場の前の方、右寄りで6900円。
休憩を挟んで3時間半の長丁場を、田舎にある日本家屋の居間というワンセットだけで通しちゃうけど、よくできた舞台で、長さを感じさせない。柏木家3姉妹の、思い通りにならない人生と微妙なすれ違い。「祈りと怪物」のようなグロテスクさやスペクタクルはなく、随所に挟まれた家族劇らしい細かい笑い(ダバダとか、背の順に並んでいるとか)がいいテンポだ。
ある程度年齢を重ねたとき、人は何をあきらめ、何を大切にしていくのか。心の暗部を思わせる「闇」が視覚の「闇」に転じ、映像、写真を小道具にしたラストでは、しみじみとさせる。大人っぽい感じは「百年の秘密」の系譜かな。

軸になるのは、やや落ち目の作家の長女(犬山イヌコ)が父・伸彦(廣川三憲)に抱く複雑な思いだ。同じ作家の道を選んだために、愛情とライバル心がない交ぜになっている。しっかり者で、いつも冷静に周囲を観察するキャラクターは、ケラさんの投影なのか。
内気な次女(峯村リエ)は一家の面倒をみながら、不幸な事故の傷を抱えた夫(みのすけ)の粗暴さに悩んでいる。三女(坂井真紀)はかつて派手な継母(長田奈麻)を嫌悪して家を飛び出し、女優になったけれど、不倫騒動を起こして実家に舞い戻る。飲んだくれだけど、白い下着に象徴される率直さがいい。
この柏木家に、伸彦を敬愛し続ける実直な書生(三宅弘城が鎌塚氏キャラで)、ドキュメンタリー撮影に訪れる映像作家(岡田義徳)とカメラマン(大倉孝二)、映画プロデューサー(松永玲子)と部下(喜安浩平)、長女に思いを寄せる不器用な担当編集者(長谷川朝晴)らがからむ。

俳優陣は屈折が強いみのすけら、のきなみ達者だ。岡田はそれほど見せ場はないのに、理想家肌の繊細さに生活力のない不安定感がにじんで、不思議な色気がある。導入部の神経質な先妻と、声が大きく押しの強いプロデューサーの2役を演じる松永は、振幅が大きく存在感たっぷり。大倉が伸び伸びと、ギャグや仕草で飛び道具ぶりを発揮していた。ほんとに目を離せない俳優さんです。
ささやかな家族の歴史は、岡田の語りや字幕で解説。ちょっと饒舌だけど、わかりやすい。シンプルなスポットライトのほか、プロジェクションマッピングが効果を出していた。

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