盲導犬
シアターコクーン・オンレパートリー2013 盲導犬-澁澤龍彦「犬狼都市」より- 2013年7月
唐十郎が蜷川幸雄のために書きおろした1973年初演作を、蜷川が3度目の演出。シアターコクーン、前の方中央の良い席で9500円。客層は幅広く、大人の男性が目立つ。休憩無しの約1時間40分。
何といっても宮沢りえがよかったなあ。真紅のドレス姿がすらっと綺麗で、表情がよく動く。奇妙なダンスや、舞台一面に舞う白い毛をふうふうする仕草が可愛らしく、歌を含めて声も安定。床がびしょびしょになるほど汗だくなのに、なぜか透明感がある。
物語は新宿。コインロッカーをこじ開けようとしている銀杏(宮沢りえ、バンコクのダンサー・トハと2役)と、ロッカーの鍵を持ったまま赴任先のバンコクで落命した夫(白いスーツの木場勝己、盲導犬訓練学校の「先生」と2役)、銀杏の初恋の人タダハル(小久保寿人)の因縁話に、幻の盲導犬ファキイルを探す男(古田新太)とフーテン少年(小出恵介)の放浪が錯綜する。不服従ということと、革命の挫折やグローバリゼーションの矛盾が絡むイメージだけど、あれこれ理屈を考えるより、歌うようなセリフの連なりとリズムに、とっぷり身を委ねて心地よかった。
全体に朗らか、かつロマンティックで、2012年に観た唐・蜷川コンビの「下谷万年町物語」に比べて怪しさは控えめ。宮沢りえと木場さんの存在が上品だからかな。古田・小出コンビもアウトローの熱というより、ナンセンスな笑いが効いていて幼児性が色濃かった。特に小出くんのニタニタ笑いは、なかなかの存在感。こういう役回りが合っているのかも。さいたまネクスト・シアターの小久保くんもがんばってた。
ほとんどのシーンがロッカー前で繰り広げられるので、閉塞感は否めないものの、何匹もの犬、マッチやバーナーの多用で変化をつけ、ラストはきっちりスケールを出してましたね。プログラムでいろんな人が初演時の状況を証言する中に、岩松了さんが「蜷川さんとの出会い」を書いている。歴史だなあ。
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