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歌舞伎「東海道四谷怪談」

 歌舞伎座新開場葺落七月花形歌舞伎 夜の部 「通し狂言東海道四谷怪談」 2013年7月

4月以来の大物勢揃いにかわり、花形が前面に出た7月。将来を背負って立つ面々が躍動するのを観るのは、極めつけとはまた別の楽しみだ。3回の休憩を挟んでほぼ4時間半。1階前よりほぼ中央の良い席で、1万8000円。

演目は夏らしく、あまりに有名な鶴屋南北の怪談だが、個人的には昨年、橋本治の現代版を観たことがあるだけ。中盤までは、伊右衛門と隣の伊藤家の非道ぶり、お岩の怨み節に辟易としたが、徹底したエゴと退廃を美談「忠臣蔵」の影に位置づけた着想に舌を巻く。ラストはきっちり、ケレンとスターの見せ場があって満喫した。何といっても菊之助が、お化けなのにプライドが高くて上品。色悪の染五郎は凄みがイマイチなものの、お父さん、叔父さんに通じる大きさがにじんで楽しみだ。

序幕の第一場・浅草観音額堂の場は主要人物がほぼ総登場して、伏線が張られる。まず薬売りの直助(松緑)がお袖(面長の梅枝がけっこう綺麗)に言い寄る。伊右衛門(染五郎)は過去の悪事を知る舅の四谷左門を追いかけ、そこへ通りかかった伊藤家のお梅が一目惚れする。小間物屋の与茂七(菊之助)は伊藤家に奪われかけた討ち入りの廻文状を取り返す。
続く宅悦地獄宿の場でお袖、与茂七夫婦がびっくりの再会。こんな場所なのに喜んじゃうし、小山三さんも登場するしでコミカルだ。お袖を奪われた直助が与茂七を追いかける。第三場・浅草暗道地蔵の場、第四場・浅草観音裏田圃の場からぐっと陰惨になり、伊右衛門が四谷左門を、直助が与茂七(実は人違い)を刺す。さらに2人の娘、妻にあたるお岩(菊之助が2役目)、お袖姉妹を騙して連れて行く。
15分の休憩後、雑司ヶ谷四谷町伊右衛門浪宅の場で、伊右衛門が下男の小平(菊之助3役目)を捕らえる。お岩が伊藤家から貰った薬(実は毒)を、時間をかけて丁寧に丁寧に飲む仕草が素晴らしい。回り舞台で伊藤喜兵衛内の場に転じ、伊右衛門が裏切りを決意。伊藤家面々の、普通の人の冷酷にぞっとする。浪宅の場に戻って、いよいよお岩が面がわり。伊右衛門と伊藤家の企みを知ってからの「髪梳き」は本当に怖い。怒濤の悲惨に突入し、お岩、小平にお梅と祖父の喜兵衛までが命を落とす。ひどい話だなあ。

30分の休憩を挟んで三幕目、本所砂村隠亡堀の場で、逃亡中なのに格好つけて釣りに来ていた伊右衛門が性懲りもなく悪事を重ね、「戸板返し」で菊之助さんが3役早変わりを披露。
15分の休憩が終わると、大詰第一場・滝野川螢狩りの場。久しぶりの上演だそうで、伊右衛門の夢の中。がらっと雰囲気を変え、伊右衛門とお岩が意表を突く美しい衣装で寄り添う。そして第二場・本所蛇山庵室の場へなだれ込み、回向をする伊右衛門をお岩の霊が苦しめる。悪企み仲間が花道でなく通路を駆けてきて、観客がどよめく。さらに菊之助さんが燃え上がる提灯から宙乗りで飛び出す「提灯抜け」で驚かせ、「仏壇返し」へと大活躍。追っ手・与茂七に替わって伊右衛門と見得を切り、幕切れとなりました。

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