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ドレッサー

ドレッサー  2013年7月

2月に「テイキングサイド」を観たロナルド・ハーウッド作、1980年の著名なバックステージものを、三谷幸喜が演出。シス・カンパニーの豪華キャスト公演だ。世田谷パブリックシアター、2F右隅のちょっと遠いバルコニー席で8500円。客層は立ち見を含めて老若男女幅広く、ノリも良い。15分の休憩を挟み2時間半強。

2次大戦下で空襲の緊張感にさらされた英国。巡業中のシェイクスピア劇団では老座長が心神喪失状態に陥ってしまうが、付き人兼衣装係(ドレッサー)のノーマンはなだめすかして、なんとか今宵の「リア王」の幕を開けようと奮闘する。
人生とは舞台であり、誰しも人に見せたくない舞台裏を抱えている。だからこそ互いを必要とし、支え合って生きていく。孤独なリア王にひとり付き従った無名の道化は、その後いったいどんな人生を送ったのか… 三谷さんらしく笑えて、やがて哀しみがしみじみと余韻を残す。一筋縄でいかない戯曲を、主演2人がタフに見せてくれた。

座長の橋爪功さんはもちろん巧い。ベテラン舞台人の風格と、人間的な弱さ、尊大さや老いの虚しさとの間を激しく行き来する。つくづく喰えないおっさんである。胸を借りる形のノーマン、大泉洋もなかなかどうして。ほぼ出ずっぱりで、しかも口が減らないツッコミキャラだから、膨大なマシンガントークと、まめまめしい動きが要求されるが、リズム感よく軽やかにこなしていた。野心家の若手女優(平岩紙)を劣等感むき出して脅すあたりは、もっと凶暴さが欲しい気がしたものの、ラストで酒をあおって歌をくちずさむシーンでは、持ち前の切なさが全開。泣かせます。

舞台監督の銀粉蝶がさすがの貫録で、特に大詰めの慟哭はぐさっと胸に刺さった。座長夫人の秋山菜津子がいつになく可愛く、コミカルな老俳優・浅野和之は隙あらば小技を繰り出す。コミュニスト気取りの俳優、梶原善も嵐の効果音を鳴らすドタバタシーンなどで存在感たっぷり。おまけに2幕冒頭、上演シーンの声の出演は段田安則、高橋克実、八嶋智人という贅沢さだ。

構成は割とオーソドックスだったかな。華やかな舞台を裏側から見る設定で、楽屋と舞台袖のセットを左右に動かし、後方では廊下の往来も。照明の陰影を効果的に使用。三谷さんが自作以外の演出に挑む意図は今ひとつ不明ながら、そつのない仕上がりだ。翻訳は徐賀世子、劇中歌は荻野清子が作曲。主演2人が真っ赤な緞帳の前に出てくるカーテンコールが洒落てました。

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