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ハイバイ「て」

ハイバイ10周年記念全国ツアー「て」  2013年6月

1974年生まれ、引きこもり経験があるという岩井秀人の作・演出で、2009年初演の話題作を観る。東京芸術劇場シアターイースト。若い人が多い。整理番号順に入場し自由に席を選ぶ形式で、前のほう左寄りで3300円。休憩無しの1時間45分。

父の暴力のせいでバラバラになっていた一家が、久しぶりに集まった夜、高齢の祖母が亡くなる。家族の忘れられない出来事を、ごく普通の会話で淡々と、とぼけた笑いを交えつつ描く。身近な人に向けられた冷静な観察眼と、他人でないが故に傷つけあってしまう登場人物たちのいじらしさ。連れが「向田邦子のようだ」と言っていたが、まさにそんな感じだ。幻想のカラオケシーンの哀切が胸に響く。
セットはシンプルで、天井から吊したパイプの柱とノブだけのドア、ベッドと座卓など。ステージの前後を客席で挟み、立ち位置を180度入れ替えて同じエピソードを2度繰り返す。微妙に見えているところが違っていて、1回目が作家本人である次男の視点、2回目が母の視点なのだろう。祖母がずっと持っているマネキン風の「手」が奇妙だけど、それ以外は北海道の土産物やら細部がリアルで、よくできた短編小説のようだ。

冒頭、母役の扮装をした岩井が上演中の注意事項をしゃべる。「飲み物は構わないけど、飴の包みを静かに開けようとして、ずっと小さい音がしていると、かえって周囲のお客さんが気をとられて、苦労して作った芝居のほうが負けてしまうので辞めてください」。繊細で、この作家らしい言い回しだなあ。長女役の佐久間麻由、長男役の平原テツがいい存在感。

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