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ナブッコ

ナブッコ  2013年5月

生誕200年のヴェルディ初期の傑作を、イギリスのベテラン、グラハム・ヴィックの斬新な演出で。旧約聖書「バビロンの捕囚」を題材にした宗教劇を、大胆に現代の東京に置き換えた。好き嫌いが分かれるだろうけれど、個人的には馴染みやすく、楽しめた。名匠パオロ・カリニャーニが情熱的な指揮、オケは東京フィル。まず1、2幕を続けて、休憩を挟み3、4幕で計2時間半強。新国立劇場オペラパレスの中ほどやや左寄りで2万3625円。

初めての演目だったけど、当然ながら音楽が圧倒的に美しい。バンダ(舞台裏の演奏)を織り交ぜつつ、荘厳なアリアや重唱、切ない合唱に引き込まれる。タイトロールのバビロニア王、ルチオ・ガッロ(バリトン)は尻上がりに調子をあげ、ヘブライの大祭司ザッカリーア(バス)が朗々として説得力を発揮。敵役の姉アビガイッレのマリアンネ・コルネッティ(ソプラノ)は初めこそむちむちの黒パンツ姿でびっくりしたが、歌い出せば存在感たっぷりで、特に愛憎渦巻く父との重唱が素晴らしい。カーテンコールの拍手がひときわ大きく、本人も感激した様子でした。
日本勢は妹フェネーナの谷口睦美(メゾ)が白いドレスで健闘し、エルサレム勢なのにフェネーナを愛しちゃうイズマエーレ・樋口達哉(テノール)もまずまず。新国立劇場合唱団がハイライトの「ゆけ、わが思いよ」をしみじみと聴かせ、演技・ダンスも含めて期待通りの大活躍でした。

話題の演出について言えば、開演前から幕があがっていて、洒落たショッピングモールのセットに正直、度肝を抜かれた。1階、2階に高級そうなブランドショップや、林檎ならぬ洋梨マークのパソコンショップが並ぶ。どでかいエスカレーター(動かないけど)はルイ・ヴィトンのショーを思わせるとの声も。モノトーン衣装の大衆は消費文化に首まで浸かり、クレジットカードを信奉している。そこへダイハードみたいに、極彩色のマスクをつけた長髪のテロリスト集団が殴り込んできて、モールを占拠してしまう。反グローバリズムを掲げる暴徒のイメージかな。
テロリストのリーダー・ナブッコは雷に打たれ、アビガイッレが権力を掌握するが、大衆とナブッコが目覚めて手を握ると、巨大キューピーちゃんのオブジェをのせた偶像が崩れ落ちる。人々は虚飾の床をはがして木を植え、アビガイッレは後悔しつつ息絶える。本当はラストで雨が降るはずが、初日でうまくいかなかったらしい…
演出陣はカーテンコールに登場、大胆さの割にブーイングはさほど目立たなかった。各幕冒頭の日本語のナレーションは浮いていたし、せっかく意表をつく設定なのに、自然回帰という展開はややヒネリが足りない気もしたけど、宗教、歴史に疎い身にはなかなか面白かったです。

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