レミング
寺山修司没後30周年/パルコ劇場40周年記念公演「レミング~世界の涯まで連れてって~」 2013年4月
1979年初演、「天井桟敷」の最終公演ともなった寺山修司の戯曲をもとに、ベテラン維新派の松本雄吉が演出。上演台本は松本と少年王者舘の天野天街。パルコ劇場の前の方左寄りで8400円。いつもより年配の男性が目立つ。休憩無しの約2時間。
実は有名すぎる寺山修司について、さして知識がないままサイケなイメージを持っていたのだけれど、今作は演出家の個性なのだろう、全体に乾いた感じで、陰影が濃くお洒落だ。モノトーンのシンプルなステージいっぱいに、「黒帽子の他人」ら群衆がステップを踏み続ける音楽劇。時に足、時に碁石で刻む変拍子が気持ちいい。
ストーリーらしいものはない。冒頭でアパートの壁が突如消失、それをきっかけに、見習いコック2人(八嶋智人、片桐仁)が夢の世界に迷い込む。誰がみている夢なのかも判然としないまま、古い映画の世界に浸っているスター女優(常盤貴子)や、何故かアパートの畳の下に「飼われて」いるコックの母親(松重豊)、医師と看護師、囚人らが断片的に登場。関係性を規定する壁という存在の不確かさを、強く感じさせる。「事実はすぐ風邪をひく」といった詩的なセリフの繰り返しが印象的。
タイトルのレミングではなく、都会で耐性を身につけたスーパーラットの話が出てくる。これは冒頭とラストで少年が腕に抱いているバベルの塔のような模型、つまり都市の幻想の物語なのかな。
俳優の個性は控えめ。緻密かつ全編ダンスのような舞台のなかで、小柄で頼りなげな八嶋智人が示すリズム感、コメディセンスが光る。大詰めで床下から飛び出す松重は、暴れぶりがさすが。カーテンコールでは、おばさんスタイルで可愛く挨拶してました。音楽・内橋和久の歌が耳に残る。ギターなどの演奏も。
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