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おのれナポレオン

おのれナポレオン  2013年4月

三谷幸喜作・演出、野田秀樹主演という話題の顔合わせ。ほかにも主演級がずらりと揃った贅沢な配役で、立ち見も大勢いた。東京芸術劇場1Fやや後ろ寄りで9000円。

物語はナポレオン死去の約20年後、遺骸のフランス返還を機にセントヘレナ島での最後の日々を、側にいた面々が証言する。果たして発表通りに病死だったのか、それとも暗殺か? 歴史上のエピソードを組み合わせた精緻なミステリー。加えて希代の英雄に振り回されつつ憧れる周囲の人間模様という構図は、三谷さんの得意技だ。

俳優に徹した野田秀樹が、あまりにナポレオンらしい。お馴染みの甲高い声で無茶を言い、せかせか歩き回る、飛び跳ねる。エキセントリックの陰に潜む冷徹な計算。2面性をはらんだ魅力的な造形は、なんだか三谷さんから野田さんへのラブレターのようだ。
取り巻く人々はいずれも色気がある。特に監視役であるイギリス軍人ハドソン・ロウの内野聖陽が、年齢の振幅も含めてスケールが大きく、ナポレオンといい対比。山師的な側近モントロンの山本耕史、その妻でふしだらなりにナポレオンを想うアルヴィーヌの天海祐希、ひと癖ある主治医アントンマルキの今井朋彦も、それぞれ個性を生かしていて魅力的だ。特に天海さんは姿勢が綺麗で、本当に舞台に映えるなあ。忠実な従僕マルシャンの浅利陽介が、小道具の出し入れ役のように見えながら大詰めでいいところを持っていきましたね。

劇のタイトルはお洒落なフランス語の言葉遊び。ステージの左右に客席を据え、セットは最小限に抑えて、四角い空間がやがてチェス盤に見えてくる仕掛けも洒落ている。演技指導やナポレオンの外見にからんだくすぐりがあるものの、先日の「ホロヴィッツとの対話」と比べると笑いは少なめ。各人の証言をつないでいく構成でシーンが細切れになるせいか、情報量が多いためか、休憩無しの約2時間半はやや長めに感じられたかも。
太鼓などの演奏は高良久美子、芳垣安洋。5月には意欲的なライブビューイングも。
015 016

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