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ホロヴィッツとの対話

パルコ・プロデュース公演「ホロヴィッツとの対話」  2013年3月

安心の作・演出三谷幸喜、ちょっと渋めの豪華キャストとあって、客席は大人っぽい、いい雰囲気だ。売れっ子プロデューサーの姿も。休憩無しの2時間強、パルコ劇場左寄り前の方で9800円。

ニューヨーク、1976年のある夜。誇り高い天才ピアニスト・ホロヴィッツ(段田安則)とその妻ワンダ(高泉淳子)が何の気まぐれか、長年のパートナーである調律師フランツ・モア(渡辺謙)、エリザベス(和久井映見)夫妻の自宅で夕食を共にすると言い出す。フランツらは緊張して精一杯もてなすものの、奇天烈な要求の連続に翻弄され…。

開演前、いつもの三谷さん自身が録音した案内アナウンスはなく、テレビドラマ風のオープニングロールを映すなど、いつもと趣向が異なる。物語についても唯我独尊のマエストロに振り回される凡人の悲哀を想定していたが、ちょっと違った。
確かにホロヴィッツは子供っぽいわがままを次々に繰り出し、大指揮者トスカニーニの娘であるワンダも加わって、大いに笑える。とはいえフランツはただ振り回されるだけではない。穏やかながらきっぱりと、私の主人はホロヴィッツではなく、天才を天才たらしめる音楽の神なのだと告げる。気難しいホロヴィッツがなぜスタンダードジャズを弾いたのか? 音楽の恵みを信じる者同士の、深い信頼が爽やかな余韻を残す。

面倒くさい巨匠を演じる段田の造形が秀逸。楽しくて、高齢の雰囲気も巧い。傍若無人のようで、実は心に傷を抱える高泉も技が冴える。この2人に比べると世界のケン・ワタナベは、12年ぶりの舞台で長ゼリフを大熱演しつつも不器用。その愚直な個性に当て書きしたことによって、最近の三谷作品のヒネリや緊迫感が影をひそめ、感動が前面に出た印象だ。初舞台の和久井もリズムよく笑いをとって健闘。
装置はシンプルで、床の横移動で家具を入れ替え、フランツ家、ホロヴィッツ家を見せる。背景に控えたお馴染み荻野清子のピアノが軽妙。いやー、周到な舞台でした。1800円と高めのパンフレットはクラシックCDみたいに紺の上品な装丁で、読み物がぎっしり。

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