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愛の妙薬

愛の妙薬   2013年2月

新国立劇場オペラハウスに2週連続で行く。観客は女性が多めだ。ゆったりとした指揮はジュリアン・サレムクール、オケは東フィル。休憩を挟んで2時間半。通路に面したど真ん中という、これ以上ないいい席で2万790円。ステージまるごと自分のものという感じだ。

演目は先週のワーグナーとはうって変わって、METライブビューイングのシーズン幕開けでも観たガエターノ・ドニゼッティの能天気な喜劇。ベルカント満載のアリアやチェンバロ付きのレチタティーヴォというロマン派の古風なところと、若者の成長に的を絞った現代的かつシンプルな物語の組み合わせを楽しむ。
純朴な青年ネモリーノはご機嫌なアントニーノ・シラグーザ(テノール)。第一声から朗らかで、甘いと同時に気負いがなく、イタリア魂を感じさせる。日本語をまじえたり、アディーナに近づこうとして村人を将棋倒しにしちゃったり、遊び心で客席を沸かせつつ、徐々にパワーを高めて2幕のロマンツァ「人知れぬ涙」で全開に。拍手が鳴り止まず小さく投げキッス。格好いい。
気の強いヒロイン、アディーナはニコル・キャベル(ソプラノ)。声が柔らかく、スラリとしたスパニッシュっぽい姿が映える。怪しいけどラストのいいところをさらっていく薬売り(実はワイン)のドゥルカマーラ、レナート・ジローラミ(バリトン)が堂々としていい。恋敵・軍曹ベルコーレの成田博之(バリトン)はこの役としては少し色気が足りないか。おきゃんな村娘ジャンネッタの九嶋香奈枝(ソプラノ)が健闘。そして合唱は相変わらず聴きごたえがあった。

チェーザレ・リエヴィの演出は、ファンタジックでとてもお洒落。文字を並べた紗幕や、キャンディカラーの鮮やかな衣装、かつらがポップだ。物語の鍵「トリスタンとイゾルデ」を題材に、大小の本、照明で色が変わる「Lelisir」の文字や飛行機などのセットが、大がかりだけど端正。プロンプターが演技に参加したり、2幕冒頭でチャーミングな女性2人が通路を歩いてきて、指揮者に偽薬を売りつけちゃったり、ドゥルカマーラが宴会のパスタをポケットに突っ込むといったギャグも楽しかった! やや空席があったのは残念だけど、タンホイザーとアイーダの間だから仕方ないかな。

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