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タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦

タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦  2013年2月

ワーグナー生誕200年で初期の「タンホイザー」を。ウィーン版、ハンス=ペーター・レーマン演出の再演で、指揮コンスタンティン・トリンクス、東フィル。新国立劇場オペラハウスの通路後ろ中央あたりの極上の席で2万3625円。客席にはワグネリアン多数、そして財界人、政治家のお顔も。2回の休憩を挟み4時間強。

当然だけど曲の力が凄い。あまりに有名なバレエ付き「序曲」の分厚さ、2幕の「入場行進」の高揚感は圧倒的だ。子音まできっちり聴かせる3幕のアリア「エリーザベトの祈り」や「夕星の歌」も美しいなあ。
物語はワーグナーらしく、中世ドイツを舞台にしたお伽噺。騎士で芸術家のハインリッヒ(タンホイザー)が竜宮城みたいなヴェーヌスベルクで放蕩。いったんヴァルトブルク城に戻るが、歌合戦でヴェーヌス讃歌を披露してしまい、贖罪のためローマへ巡礼しても許されない。エリーザベト姫の自己犠牲で救済されるものの、力尽きる。単純なようだけど、精神と官能、神と自然の2項対立をめぐる苦悩と超越、というテーマは普遍的だ。

歌手陣は女性陣が総じて優勢だったかな。無垢なエリーザベト役の若いミーガン・ミラー(ソプラノ)、対する魅惑的なヴェーヌスのお馴染みエレナ・ツィトコーワ(メゾ)はそれぞれ声に迫力があり、外見も美しい! 実直な親友ヴァルフラムを歌った長身ヨッヘン・クプファー(バリトン)は声がふくよかだし、領主ヘルマンのクリスティン・ジグムンドソン(バス)、ハインリッヒを追いつめちゃう騎士ヴァルターの望月哲也(テノール)もなかなか。代役でタイトロールをつとめたスティー・アナセン(テノール)、そしてオケの管楽器陣は、この演目としてはちょっとパワー不足だったか。牧童の国光ともこ(ソプラノ)がチャーミング。そして何より新国立劇場合唱団が聴かせる~ 特にラスト、奇跡によって芽吹いた杖を掲げるシーンはぐっときました。

演出は比較的動きが少なく、スタイリッシュ。冒頭で氷のような巨大アクリル柱がせり上がり、そこに印象的な映像や照明、十字架を配していた。色彩を抑え、でも現代的になりすぎない衣装もお洒落。序曲で拍手が出て、たしなめられるハプニングも。
20130202a

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