METライブビューイング「マリア・ストゥアルダ」
METライブビューイング2012-2013第8作「マリア・ストゥアルダ」 2013年2月
ドニゼッティ女王3部作の2作目をMETが初演。指揮マウリツィオ・ベニーニ。演出は昨シーズンの「アンナ・ボレーナ」に続いてデイヴィット・マクヴィカー、美術・衣装はジョン・マクファーレンでスコットランド出身コンビだ。1月19日上演のものを東劇で。
物語は、幽閉の身のマリア(スコットランド女王メアリー・スチュアート)と、王位への脅威を恐れるエリザベッタ(イングランド女王エリザベス1世)とのプライド対決、これに尽きる。2人が直接顔を合わせ、決定的に決裂する1幕、2幕を続けて1時間強。インタビューと休憩を挟んで、ついにエリザベッタが執行状にサインし、マリアが断頭台に向かう3幕を1時間。
歌手陣ではマリアのジョイス・ディドナート(メゾソプラノ)が圧巻だ。2幕でエリザベッタ(エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー、ソプラノ)にいたぶられ、我慢が限界に達して「賤しい庶子」とぶち切れる場面の迫力、さらに3幕では次から次へとアリアを連投。コロラトゥーラはもちろん、合唱を従えて弱音からずうっと声を引っ張るところが凄い。対する南ア出身、これがMETデビューのヒーヴァーも吹っ切れたヒールぶりが堂々として立派!
女王たちに比べると、2人の板挟みになるレスター伯爵のマシュー・ポレンザーニ(テノール)、タルボット卿のマシュー・ローズ(バス)らは悪くないけど、いかんせん影が薄い。この作品の上演の機会が少ないのは、やや単調なせいか、イングランド側が悪者過ぎるからかと考えていたけれど、終わってみると男性陣に見せ場が無さ過ぎるからかもと思えてくる。
四角い台を据えたセットはシンプルで、衣装も襞襟などテューダー朝の伝統を踏まえつつ、すっきりしている。エリザベッタは冒頭の白ドレス、真紅の狩り装束から、後半は構築的でゴージャスなドレスに変化して年輪がくっきり。対照的にマリアはずっとモノトーンだけど、大詰めで鮮やかな短髪と赤のドレスに転じて悲劇性を印象づけていた。
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