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音のいない世界で

音のいない世界で  2013年1月

2013年の観劇初めは親子向けの新作。作・演出長塚圭史、振付近藤良平。演じるのはこの2人プラス松たか子、首藤康之。観客は親子連れに限らず幅広い。エスカレーター工事中の新国立劇場小劇場、右後方の席で5250円。

玉砂利の溝に囲まれた小さいステージに、回り舞台と家のかたちのアクリル板。冒頭に長塚と近藤が短く挨拶して、なごやかに物語が始まる。設定はO・ヘンリー「賢者の贈り物」を思わせる、冬の夜の若く貧しい夫婦宅だ。疲れた妻が居眠りしている間に、2人組の泥棒が大事な旅行鞄型の蓄音機を盗んでしまう。何をなくしたのかも判然としないまま、大事なものを探しに町をさまよう妻、その後を追う夫と、道中で彼らが出会う人々の物語。

鞄の働きを封じ込めてしまったため、世界から音楽が消えうせたというファンタジーが、理屈抜きに面白い。回り舞台からぴょこぴょこ現れる、無口になった小鳥。角笛が鳴らないので、飲んだくれてばかりいる羊飼いと羊が、傾いたテーブルで酒瓶を滑らす動き。そして音を失ったオーケストラ指揮者が、「こう、以前は見てない方向も見えていた気がするんですよ」というセリフ。形のないものの存在の重さ、と呼んでしまうのは、ひねた大人のこじつけだろうか。
全体に可愛らしく、淡々とした筋運びのなかで、ラストの松たか子のしっかりした歌声が印象に残る。ダンサー2人はあえて表現を抑制していたようで、意外に長塚の動きが達者に映った。篠山紀信さんがいらしてましたね。

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