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祈りと怪物

シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ2012 「祈りと怪物」~ウィルヴィルの三姉妹~〈KERAバージョン〉 2012年12月

シアターコクーン・オンレパートリー2013 「祈りと怪物」~ウィルヴィルの三姉妹~〈蜷川バージョン〉 2013年1月

ケラリーノ・サンドラヴィッチの新作を、作家本人と蜷川幸雄の演出バトルで上演する意欲的な企画。2カ月連続でシアターコクーンに足を運んだ。ケラ版は1F右寄り、蜷川版は2F最後列で9500円。いずれも観客層は幅広い。2回の休憩を挟み4時間強で、蜷川版のほうが少し長め。

個人の好みで結論から言っちゃうと、蜷川版の技あり! ケラ版が2階建てのセットに調度を並べ、ギリシャ悲劇などの要素を詰め込んだのと対照的に、蜷川版はモノトーンの四角いステージでシンプル。冒頭から和装の合唱団(コロス)のラップでリズムを盛り上げ、お馴染みの大鏡はもちろん、飛び立つ蝶の群れと虹の幻想、上空からドサッと塊が落ちてくる禍々しさ、大詰めには降りしきる本水の切迫感と、次々仕掛けを繰り出して緊張を切らせない。左右の字幕で丁寧に場面を解説しちゃう割り切りもさすがだ。ラストは亡き勘三郎へのオマージュさえ感じられ、今さらながら演出の力を思い知る。

蜷川版まで観て、複雑でタフな物語が腹に落ちる気がした。舞台は架空の町ウィルヴィル。19世紀末あたりの雰囲気だが、教会の象徴など散りばめられたイメージの歪みが不気味。怪物たる独裁者ドン・ガラスを核に、3人の娘、無垢な動物園の飼育員トビーアスや密航者ヤン、酒飲みのグンナル司祭、なくした息子の幻を求める使用人夫婦と怪しい薬をばらまく錬金術師、差別された仕立屋の父娘、地下活動でドンに抵抗する教師らが、ケラさんらしい因縁渦巻く群像劇を繰り広げる。時にグロテスクなシーンを交えつつ、破滅へとなだれ込む暴力と怨みの愚かな連鎖。もう一つ、ケラ劇に欠かせないブラックな笑いとか、ドンが繰り返す「倫理的に」というおよそ似合わないセリフは、愚かさに対して正論を説ききかせる行為さえも嘲笑するようだ。

豪華な配役を比べながら観るのも面白かった。ケラ版は道化パキオテの大倉孝二が、切なさ満載で秀逸。錬金術師の山西惇、グンナル西岡徳馬、ヤン丸山智己、使用人メメの犬山イヌコもなかなか。ドン・ガラスは生瀬勝久。
対する蜷川版のドンでは、いつもなら舞台回し役の勝村政信が、恰幅のいい扮装と圧倒的な声量で見事な主演ぶり。中盤ではステージを踏み外しちゃうハプニングもあったけど。トビーアス森田剛の純真から狂気への転落ぶりが際立つ。親友パブロの満島真之介は長身が映え、次女の中嶋朋子、祖母の三田和代、グンナルの古谷一行、ドンの後妻・渡辺真起子も存在感があった。大好きな伊藤蘭さんは、今回はちょっと知性が勝ち過ぎたかな。いやー、見応えがあるシリーズでした。

20130127a

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