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トップドッグ/アンダードッグ

シス・カンパニー公演「TOPDOG/UNDERDOG」  2012年12月

アフリカ系アメリカ人女性として初のピュリッツァー賞(戯曲部門)を受けたスーザン・ロリ・バークス作を、「ミッション」がとても良かった小川絵梨子が自ら翻訳し演出する注目の舞台だ。シアタートラムの前の方中央のいい席で6800円。

休憩10分を挟んで2時間強。何回か暗転があるものの、狭い安アパートの一室というワンセットで、堤真一と千葉哲也が語りまくる。地味で濃密な2人芝居だ。滑り出しこそ2人が役柄よりも賢そうにみえ、汗だくの堤もちょっと気の毒だったけれど、後半はリアルな兄弟の世界にもっていかれた。さすがの力業。

登場するのはアフリカ系の兄弟だけ。兄は黒人解放のリンカーン、弟はその暗殺者ブースという皮肉な名前をもつ。かつてカード賭博のディーラーとして鳴らした兄は、挫折を経て今はコニーアイランドあたりで失業の予感に怯えながら、暗殺ごっこのリンカーン役を演じて日銭を稼いでいる。弟は定職をもたない万引き常習犯で、兄のいかさまの腕に憧れている。
題名の「勝ち組・負け組」に象徴される、依存と反発の綱引き、危うさ。野性的な兄、お調子者の弟のコミカルなやりとりですっかり油断させておいて、やがて女性をめぐる確執や、暗い少年時代が明らかになっていき、衝撃的な悲劇へとなだれ込む。向き合っていても救いはないのだけれど、決して他人にはなれない人間同士の悲哀。アメリカ社会の底辺の暮らしと差別をバックボーンにしつつも、普遍的な印象を残す。

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