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文楽「苅萱桑門筑紫轢」「傾城恋飛脚」

第一八一回文楽公演「苅萱桑門筑紫轢」「傾城恋飛脚」 2012年12月

2012年は補助金削減問題、三谷新作公演、キング住太夫さんの病気休演など、いろいろあった文楽界。締めくくりは恒例の中堅による公演で、夕方からの1部制。満員御礼でちょっと安心する。

演目はまず説教節「かるかや」などを下敷きに並木宗輔、並木丈輔が合作した「苅萱桑門筑紫轢(かるかやどうしんつくしのいえづと)」から、守宮酒(いもりざけ)の段を1時間半弱。加藤家の女之助(勘弥)が、家宝「夜明珠(やめいしゅ)」を奪おうとする大内家の使者・ゆうしで(勘十郎さんが可愛く)を誘惑する風変わりな話。守宮酒はイモリの黒焼きを浸した媚薬だ。女之助の好色ぶりを語る冒頭から誘惑シーンまではコミカルで、なんとも艶っぽい。後段は一転悲劇となり、ゆうしでが堕落を恥じてかんざし代わりの白羽の矢で自害をはかる。苦しい息の下で、女之助を斬ろうとする父・新洞左衛門(玉女)を止め、たとえ策略があっても一目で恋に落ちたのは間違いない、と言い切るところが格好良い。新洞左衛門は悲嘆をこらえ、偽の珠を斬ってことを収める。千歳大夫の病気休演で呂勢大夫が奮闘。

30分の休憩を挟み、55年ぶりの上演という高野山の段を30分。修行僧の加藤繁氏(和生)が父を探しに来た石童丸(蓑紫郎)と出会うが、名乗れずに葛藤する。山中のセットは階段の移動が大変そう。呂勢さんが連投で活躍するも、作品自体がやや平板か。

短く10分の休憩後、「傾城恋飛脚」から新口村の段を1時間。9月の演目だった「冥途の飛脚」がベースだが、こちらでは八右衛門は悪役という違いがある。
封印切の大罪を犯した忠兵衛(文司)が破滅を覚悟しつつ、父に一目会いたくて梅川(清十郎さんがしっとりと)と故郷に逃げてくる。2人の粋な黒留袖、ほおかむり姿が演劇的。父・孫右衛門(玉也)はとばっちりを受けた養い親への義理と親心との板挟みで苦しみ、目隠しして再会を果たす。昨年、千歳大夫、津駒大夫で聴いた演目だ。今回の咲甫大夫は朗々、文字久大夫も気持ちがこもっていたけど、泣かせどころはもう一歩かな。錦糸さんが迫力の三味線で場を締めてました。
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