The Library of Life まとめ*図書館的人生 上
The Library of Life まとめ*図書館的人生 上 2012年12月
東京芸術劇場リニューアル記念で、10周年のイキウメ公演。「ミッション」がとても良かった前川知大の作・演出だ。シアターイースト(小ホール1)の前の方中央で4200円。観客は若め。休憩無しの2時間強。
短編シリーズ「図書館的人生」の6編を装置転換無しでつなぎ合わせた、非常に緻密で知的な物語だ。6編とは病院の一室に偶然居合わせた5人が地震に遭う「青の記憶」、ホームレス達による時空を超える実験「輪廻TM」、投身寸前の女性に怪しい男2人が話しかける「ゴッド・ゼーブ・ザ・クイーン」、鬼と亡者のやりとり「賽の河原で踊りまくる『亡霊』」、感情を顔に出せない体質の男とその妻との葛藤「東の海の笑わない『帝王』」、そしてプロの万引き男が懸賞で暮らす女に惚れ込む「いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ」。いずれも日常のすぐ隣にあるファンタジーで、発想がユニークだ。
後方には天井まで届く本棚が並び、図書館らしい静謐さが舞台を支配する。大勢の人生がこれらの本に記録されており、メーンのストーリーとは関係なく、いつも誰かしら舞台の隅に座り込んで、この「誰かの人生の本」を拾い読みしている。誰の人生も、ほかの誰かに見つけてもらうことで存在するということが、やがてしみじみと胸に染みてきて温かい気持ちになる。
6編が交錯する複雑なストーリーを、俳優陣が会話をリズミカルに繰り出して達者に演じた。「東の海…」の奇妙な動きの夫・浜田信也、コミカルなアフロの男・盛隆二、看護士や自殺しそうな女などをきびきび演じた岩本幸子、淡々とした懸賞の猛者・伊勢佳世、饒舌な万引のプロなどの安井順平ら。抑えめの照明、水滴のような効果音がお洒落だが、2時間の間にはもう少しアクセントが欲しかったか。次作も楽しみです。
« 日の浦姫物語 | トップページ | 文楽「苅萱桑門筑紫轢」「傾城恋飛脚」 »
「演劇」カテゴリの記事
- ドードーが落下する(2025.01.18)
- 消失(2025.01.25)
- 2024年喝采尽くし(2025.01.01)
- 天保十二年のシェイクスピア(2024.12.28)
- モンスター(2024.12.28)
コメント