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トスカ

トスカ  2012年11月

2012年オペラ鑑賞の締めくくりは新国立劇場で、ジャコモ・プッチーニの名作を堪能。ホワイエに飾られたクリスマスツリーに浮き立つオペラハウス、1F左寄りのS席で2万790円。演目のせいか客層が幅広く、いい雰囲気だ。沼尻竜典指揮、東フィルで休憩2回を挟み約3時間。

それにしても、なんて起伏に富み、スピーディーな物語だろう。美女で幼いほどに純粋なスター歌手、理想に燃える恋人、そして希代の敵役と、人物造形が複雑かつ魅力的。1900年初演とあって、現代的な音楽は映画を観ているようでもあり、甘美かつドラマティックだ。

舞台は1800年、ナポリ王党派支配下のローマ。1幕の聖アンドレア・デラ・ヴァレ教会で、共和派の画家カヴァラドッシ(サイモン・オニール、テノール)は親友で脱獄してきた政治犯のアンジェロッティに会い、自分の別荘に匿う。冒頭で堂守(志村文彦、バス・バリトン)に仕掛ける悪戯とか、信仰にあついけれど嫉妬深い歌姫トスカ(ノルマ・ファンティーニ、ソプラノ)のわがままぶりが愛らしい。やがて残忍な警視総監スカルピア(センヒョン・コー、バリトン)が登場、扇の小道具を使ってトスカの猜疑心をあおる。オテロのハンカチみたいですね。カヴァラドッシのアリア「妙なる調和」や、トスカとの二重唱が美しく、幕切れのカトリック聖歌「テ・デウム」は壮麗だ。
2幕はスカルピアの公邸ファルネーゼ宮殿(現代ではフランス大使館というから皮肉だ)。ナポレオンがナポリ王党派に勝利した、という共和派にとっては朗報がもたらされるものの、トスカはカヴァラドッシへの拷問に耐えかねて、アンジェロッティの居場所を白状してしまう。さらにカヴァラドッシを救うべく、空砲で銃殺刑にみせかけるよう取引した後、迫るスカルピアをついに刺殺。激しい展開だなあ。トスカがカンタータで高音を披露し、さらにハイライトの「歌に生き、恋に生き」で喝采。
大詰め3幕は、夜明けの聖アンジェロ城。羊飼いの歌が響く。トスカはカヴァラドッシの牢を訪れてすべてを語り、銃殺刑での「演技」に満足するが、実はスカルピアに騙されていて恋人は息絶えてしまう。絶望したトスカは追っ手の前で城壁から身を投げる。カヴァラドッシの「星は光りぬ」が甘く劇的だ。

新国立ではお馴染みのファンティーニが貫録を示し、最後は直立のまま倒れ込む熱演を披露。何度もカーテンコールに登場し、投げキッスを繰り返してお茶目だった。コーも堂々としていていい。オニールは声量十分なものの、細やかな情感の点では今ひとつだったか。日本人キャストも健闘して、とても楽しめた。
プロダクションはアントネッロ・マダウ=ディアツ版を田口道子が再々演出。オーソドックスで落ち着いていた。1幕フィナーレのきらびやかな教会やライティングが印象的。3幕の満月から夜明けに至るシーンでは、高い天井を生かしてセットを上下させるなどダイナミックだった。

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