伝統芸能の今2012「六道の辻」「龍神」
伝統芸能の今2012 2012年9月
歌舞伎囃子方で三響会(田中家三兄弟の会)の田中傳次郎が演出、能狂言と歌舞伎が融合するイベントに足を運んでみた。浅草公会堂の2階最前列右寄りの席で6500円。市川猿之助、片岡愛之助とスターが揃い、ファンらしき中年女性が目立つ。小児がん患者と家族の支援、途上国へのワクチン普及を対象にしたチャリティー公演で、開幕前にロビーで出演者が寄付を呼びかけていた。
演目はまず茂山逸平作の新作狂言劇「源平騒乱・六道の辻」。閻魔大王(猿之助)が亡者を地獄へ連れこもうと狙うところへ、平忠度(茂山逸平)がやってきて、俗物ぶりを発揮、金銀を差しだしてなんとか極楽へ逃れようと画策する。颯爽とした源義平(愛之助)も、清盛を討つため極楽行きを目指していて大騒ぎ。結局、金銀は募金箱へ、というオチで、傳次郎のチンという鐘の音が笑いを誘う。
逸平の格段に声が通るところはさすがだ。後方に控える能楽一噌(いっそ)流笛方の一噌幸弘が驚異的で、リコーダーや角笛などを次々に持ち替えるばかりか、3本ぐらい同時に吹いちゃう。人間国宝なのに、型破りな人だなあ。
10分の休憩後、出演者が並んで30分を超える座談会。まずチャリティーの趣旨説明、3・11後に渋谷駅前で突発的に募金活動をした思い出など。逸平が飄々として、いい感じだ。一噌幸弘が加わってしょうもない駄洒落で笑わせた後、サプライズゲストとして三味線の上妻宏光が登場。猿之助ゆかりの大河ドラマの旋律を混ぜた「津軽じょんがら節」、そしてオリジナルを1曲聴かせてくれました。
20分の休憩を挟んで猿之助振付の創作「龍神」が15分ほど。逸平の語りに続いて演奏があり、一噌幸弘がまた息が長くてびっくり。幻想的な照明のなか猿之助が白い衣装、緑の髪、頭に龍を載せた姿で現れ、鮮やかな跳躍を披露。楽しい会でした。
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