温室
温室 2012年7月
新国立劇場小劇場で2011/2012シーズンのラスト。やや左寄りの席で4800円。客層は幅広い。1980年、ロンドンで初演されたハロルド・ピンターの不条理劇を、喜志哲雄が翻訳、深津篤史が演出。休憩無しの2時間弱。
舞台は国が運営するらしい、なにやら特殊な療養施設。責任者のルート(段田安則)は、部下ギブス(高橋一生)から患者の死と、別の患者の出産という不祥事の報告を受けて動揺し、秩序維持を厳命。ギブスは若く純真な職員ラム(橋本淳、後半ずうっと失神している大変な役)に責任を押しつけようと図る。職員のカッツ嬢(足がきれいな小島聖)や中堅ラッシュ(山中崇がきびきびと)らがからみ、波乱のクリスマスの夜を迎える。
物語は管理社会の苛立ちや恐怖、かみ合わないコミュニケーションを象徴しているようだけど、正直、難解過ぎて消化不良。登場人物が絶えず、頭上にある拡声器みたいなものを気にする仕草が印象的だ。幕切れだけ登場する官僚(半海一晃)がその正体なのか。
演出は意欲的。客席が舞台の表裏を挟み、左右は鏡張り、グレーの床の回り舞台に、真っ赤なデスクやソファーが点在するだけ。その回り舞台が時に早く、時にゆっくりと動き続ける仕掛けが出色だ。見る者の不安をかき立て、現実の不確かさを実感させる。段田安則が至近距離でよどみなくしゃべり、動き、時に喜劇性を出して劇を主導。注目の高橋一生はいつものように引き気味ながら、微妙な表情と声でとらえどころ無さを示した。
« 薮原検校 | トップページ | まぜるな、危険!二〇一二「路地裏の伝説」 »
「演劇」カテゴリの記事
- ドードーが落下する(2025.01.18)
- 消失(2025.01.25)
- 2024年喝采尽くし(2025.01.01)
- 天保十二年のシェイクスピア(2024.12.28)
- モンスター(2024.12.28)
コメント