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狂言「千切木」能「鍾馗」

6月普及公演 狂言「千切木」能「鍾馗」  2012年6月

雨の国立能楽堂。中庭の緑が綺麗で、売店に並ぶ様々な扇が面白い。女子高生の団体を含め、満席の人気ぶりだ。正面席の中ほどで4800円。

冒頭に「解説・能楽あんない」として中国文学者の井波律子国際日本文化研究センター名誉教授が登場し、道教系の魔よけ・鍾馗(しょうき)についてのお話。科挙に落ちて命を絶った鍾馗の霊が、不憫に思ってくれた高祖皇帝に恩を感じ、玄宗皇帝のマラリアを退治したという伝説のこと、玄宗が画家・呉道子に絵を描かせたのが一般に流布して、日本で端午の節句に絵を飾る風習に至ったこと、京都の民家が屋根に瓦製の鍾馗像を置いたりする風習のことなど。旧暦の5月5日が今年は6月24日にあたるので、今月の演目になっているようだ。ちなみに端午の節句のもとは、高潔さゆえに左遷され、自害した官吏・屈原の弔いだとか。知らなかったなあ。悲劇の人を祀ると守り神に転じるという発想が面白い。

続いて狂言・大蔵流「千切木(ちぎりき)」。千切木は胸の高さに切った棒で、武器になる。口うるさいため疎まれている「宗匠」太郎(シテ・山本東次郎)が、呼ばれもしない連歌の初心講に押しかけて横柄に振る舞い、主人(アド・何某の山本則俊)らから袋だたきにあう。妻(山本泰太郎)の叱咤で仕返しに回るけれど、皆に居留守で上手にいなされ、虚勢を張る、というちょっとシニカルな笑い話だ。ほかに太郎冠者の若松隆ら。朗々たる声が心地良く、スピード感がある。太郎が妻の尻に敷かれる感じなどが可笑しくて、客席はよく沸いてました。

休憩時間に資料展示室の能衣装や面の展示を眺める。
そして後半は能・金春流「鍾馗」。後方に笛、小鼓、大鼓、太鼓、右側に地謡8人が2列に並ぶ。終南山の麓から都に向かう旅人(ワキ・高安勝久)の前に、里人(前シテ・金春安明)が現れて「皇帝が自分を敬えば宮中に奇瑞を示す」と奏上してほしい、実は自分は鍾馗だ、と名乗り、世の無常を語る。間狂言で山麓の者(アイ・山本則重)が鍾馗の由来を聞かせたあと、後場でいよいよ早笛にのって鍾馗の霊(後シテ)が登場。真っ赤な髪、恐ろしげな面(小べし見)で剣をひっさげた姿だ。悪鬼を払って国を守護する誓いを示し、天下泰平を祝して明るく終わる。最後の方で袖を腕に巻いたりして、けっこうリズミカルで動きがあった。太鼓が力強く盛り上がると思わず拍手したくなり、能は音楽なんだなあ、と実感。囃子方の間で指揮者、リーダーは決まっていないそうだけど。

パンフレットを読むと、皆さん世襲なんですねえ。それから各席についているスクリーンに詞章が映るのが便利。ちょっと言い回しが違ったりして興味深い。

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