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オテロ

オテロ  2012年4月

ヴェルディ円熟期の悲劇を新国立劇場で。ジャン・レイサム=ケーニック指揮。ほぼ中央のいい席で2万3625円。20分の休憩を挟んで約3時間。物語はおなじみシェイクスピアの心理劇で、登場人物それぞれの思惑が交錯する構成が現代的だ。

序曲はなく、いきなり激しい嵐の合唱で幕が上がる。トルコ戦の英雄オテロ(ヴァルテル・フラッカーロ、テノール)が凱旋するが、騎手イアーゴ(ミカエル・ババジャニアン、バリトン)は逆恨みから悪巧みをめぐらす。美男の副官カッシオをはめる「乾杯の歌」の、不吉に下降する半音階が面白い。オテロと清純な妻デズデーモナ(マリア・ルイジア・ボルシ、ソプラノ)の「すでに夜は更けた」には、伏線になる接吻の動機も。
2幕は悪役イアーゴの「クレード(悪の信条告白)」が聴かせる。泥をすくって壁にたたきつける演出が印象的。「嫉妬は蛇」との囁きで、疑念を植え付けられたオテロとの「復讐の二重唱」が怖い。恐ろしい嫉妬の伝播だ。
休憩後の3幕で、オテロはデズデーモナに贈ったハンカチの行方をめぐり疑心暗鬼にとらわれ、「神よ!あなたは私に」と苦渋を吐露。コンチェルタートに突入すると、完全に自制を失ってしまう。
4幕に入り、デスデーモナがクラリネットの先導でどこかオリエンタルな「柳の歌」、そして「アヴェ・マリア」を聴かせる。オテロはついに妻を手にかけてしまうが、侍女のエミーリアが夫イアーゴの策謀を暴露。「オテロの死」で後悔して自害という、いつもながらびっくりの幕切れ。虚しく響く接吻の動機が哀しい。

マリオ・マルトーネの演出が洒落ている。物語の舞台はキプロス島だが、ヴェネツィアを思わせる水路と橋を巡らして、転換は中央の石造りの塔を回すだけ。衣装も黒、白、青など、古風だがシンプルで、水面のさざ波の反射や夕闇など、照明の豊かな変化が映える。
歌手陣では、屈折した人物を描いたババジャニアンに拍手が多かったかな。長身のフラッカーロは十分ドラマティック。ポプラフスカヤの代役、ボルシも可愛いかった。ほかにカッシオが小原啓楼、エミーリアが清水華澄。

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