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シンベリン

彩の国シェイクスピア・シリーズ第25弾「シンベリン」  2012年4月

蜷川幸雄演出で、豪華キャスト勢揃いの1作。彩の国さいたま芸術劇場大ホールで、観客は年配の人が目立つものの、冷たい雨にかかわらず老若男女幅広い。1F後ろ寄り右側で9500円。

のっけから舞台上に鏡の並ぶ楽屋がしつらえられ、浴衣などを羽織った俳優たちが三々五々登場。全員が横に並んでぱっと服をとると、古代ブリテンの衣装が現れて一気に物語に引き込まれる。まさにニナガワワールドで、そのままテンポ良く、休憩を挟んで約3時間半。猥雑さは封印し、水墨画や巨大な月を使った知的な美しさ、つけ打ちに代表される疾走感が心地いい。

お話はブリテン王シンベリン(吉田鋼太郎)の美しく貞淑な王女イノジェン(大竹しのぶ)と、勇者ポステュマス(阿部寛)の純愛が主軸だ。もともと身分違いのうえ、王の後妻(鳳蘭)と連れ子クロートン(勝村政信)の差し金もあって、仲を裂かれたポステュマスは、ローマ人ヤーキモー(窪塚洋介)の奸計に引っかかり、王女が自分を裏切ったと思いこんでしまう。会いたい一心で、召使ピザーニオ(大石継太)の手引きでひとりウェールズに赴いたイノジェンは、追放貴族(瑳川哲朗)、幼い時に連れ去られた2人の兄(浦井健治、川口覚)と運命的に巡りあう。ついにシンベリンとローマ軍将軍(丸山智己)が戦闘に突入、ポステュマスや王子らの活躍でブリテンが勝利を掴むと、めでたくすべての誤解が解かれる。

前半は思いこみと嫉妬の心理劇。窪塚洋介の色気が出色だ。バックに巨大な屏風絵をたてて、「雨夜の品定め」と重ねた論争シーンや、王女の寝室の紗幕に映る影が、絶妙の怪しさ。相変わらず可愛らしい大竹しのぶが、少年に姿をかえて舞台の奥へと、決然と歩み去るシーンが格好良い。道化役の勝村政信ははじけっぷりがさすが。ジュピター降臨はちょっと唐突だったけどね。阿部寛は上背が映えるものの、苦悩ぶりはやや単調か。
後半はクロートンと王妃が死んでしまい、あれよあれよのハッピーエンドになだれ込む。都合良すぎる荒唐無稽な展開が笑いを誘うけど、スローモーションの戦闘の後、象徴的な1本松が登場、夫婦や親子、主従が再会を果たして、ローマ軍とも和平を結ぶ幕切れは、和解と寛容の爽やかさが胸に残る。愚かだけど愛すべき人間たち。5月にはロンドン公演も控えているそうだ。さいたまネクスト・シアターの川口覚に注目。

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