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冬の正蔵「鮑のし」「松山鏡」「ねぎまの殿様」「らすとそんぐ」「試し酒」

第二期林家正蔵独演会・冬の正蔵 2012年2月

いつもの上品な紀尾井ホール(小)。割と女性が多いかな。今回はなんと最前列、ほぼ真ん中でした。3000円。

まず二つ目・林家はな平が「鮑のし」。髪がくるくるして愛らしい。天然ボケの甚兵衛さんが、しっかり者のおかみさんに指図され、お返しを狙って大家に息子の結婚祝いの鮑を届ける。時間の関係か途中までだったけど、溌剌としていい。

続いて正蔵さんが、ちょうど雪の日という逆境ぶり、お母さんとぼんやり国会中継を観ていて、田中直紀さんをめぐりトンチンカンな会話をした、というほのぼの孝行エピソードから「松山鏡」。説明がいるのであまりかからない噺、と前置きし、鏡を知らない設定の紹介として「鏡屋」の小咄を振ってから本題へ。越後の田舎で、地頭に孝行を誉められた男が亡父に会いたいという願いを言って、鏡をもらう。鏡というものを初めてみた夫婦と、通りかかった尼を巻き込んでのドタバタ。素朴な人物像がはまっていて、いい噺だ。途中で羽織を脱ぎかけて辞めるあたり、気ままな雰囲気。先日観た文楽の「彦三権現」といい、孝行息子の話ってなんかしみる。

羽織を脱いで、そのまま「ねぎまの殿様」へ。焼き鳥じゃないよ鍋だよ、という説明から、粋なお祖母さんの思い出の料理をマクラに。殿様がお忍びで下賤な煮売り屋のねぎま鍋を食べて、その美味さに感動、お屋敷で所望する。家来の四苦八苦があって、殿は満足。椅子代わりの醤油樽まで欲しがるという、他愛なくほっこりする落ちだ。「目黒のサンマ」のあったか冬バージョンですね。
冒頭のお忍びシーンで、本郷三丁目から湯島のつづら折り、上野広小路へ、広小路は火除地だから掘っ立て小屋が集まっていて、というのんびりした蘊蓄が楽しい。煮売り屋があまりに早口で、ねぎまが「にゃ~」に聞こえるとか、酒は40文で「ダリ」とか、ネギの芯の「鉄砲」とか、庶民の暮らしをいちいち面白がる殿様がとてもチャーミングだ。

中入りはなく、続いて二つ目・林家たけ平が「らすとそんぐ」。学校寄席の苦労とかから、辞世の句を作る辞世屋さんの無茶話。汗だくの熱演だけど、もうちょっと落ち着いていたほうがいいかなあ。

トリで再び正蔵さんが悠然と登場、ほとんどマクラなしで「試し酒」。大店の旦那同士が、座興に賭をする。内容は下男の久蔵が、一気に5升呑めるかどうか。話をもちかけられた久蔵、ちょっと考えると言って外したものの、戻ってくると武蔵野の蒔絵(野がみつくせない、から呑み尽くせない)の大杯で見事に呑み干しちゃう。負けた旦那が感心しつつ、「さっき酔わない薬でも飲んできたのか」と尋ねると、「自信がないので試しに5升呑んできた」という豪快な落ち。
こちらも気持ちのいい噺だ。旦那たちの造形はお茶目で鷹揚だし、久蔵はとぼけていて素朴。木訥とした訛りがうまいなあ。酒を呑むシーンが見せどころで、開いた扇を横に使い、手の震えなど勧進帳の弁慶のような所作。席が近いからよく見えて、得しました。
終わってから「5杯空けたところで拍手がこなかった」と悔しがってたけど、いかにも拍手を誘うようなタメは少なかったと思う。師匠はそういう大向こう受けするケレンとか、人物像のひねりとかよりも、飄々とした持ち味こそが心地いいのでは、と確認しました。精進してらっしゃいます!
Shozo

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