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METライブビューイング「神々の黄昏」

METライブビューイング2011-2012第8作「ニーベルングの指環第3夜 神々の黄昏」 2012年3月

巨大回転板を使ったロベール・ルパージュ演出の「リング」、1作目から観てきていよいよ完結です。ファビオ・ルイジ指揮。2回の休憩を挟んで5時間半の超長丁場だけど、新宿ピカデリーは年配のご夫婦やワグネリアン風の男性らで盛況です。最終列中央で5000円。

やっぱり音の分厚さは格別。大詰めジークフリートの死から「ブリュンヒルデの自己犠牲」あたりは、様々なモチーフが重なりあい、甘美かつドラマティックで、管を中心にオケも全開、これでもかと盛り上がる。幕間のインタビューでジークフリートのジェイ・ハンター・モリス(テノール)が、「聴かせどころが5時間歌った後なのが辛い」と吐露して笑いを誘ってましたが。聴衆としては、映画館でくつろいで聴けるのがとても有り難い一方、この長さだと、ライブだったらさぞかし感動するだろうなあ、とも思っちゃう。

全体を引っ張るのはブリュンヒルデのデボラ・ヴォイト(ソプラノ)。前作「ジークフリート」では貫録ありすぎと感じたけれど、今作の剛胆な役回りはぴったり。なにしろ感情の起伏が激しく、最後には長年の恨みつらみ、エゴのぶつかり合いを一人で昇華させちゃうんだもの。これに対抗するには、モリスは線が細いか。ラッキーにも1週間足らずのリハーサルで代役に立った前作での、少年ぽいイメージはあっていたけれど、今回はちょっとミュージカル風に聞こえちゃうシーンもあった。この人はむしろコミカルな役が合うかな。また、2人とも色気が今ひとつなのが惜しい。新国立劇場で観たリングのほうが、策謀のあやしさが前面に出てぞくぞくした。

カーテンコールでは、深みのある声で悪役ハーゲンを演じたハンス=ペーター・ケーニヒ(バス)と、溌剌としたギービヒ家の妹グートルーネのウェンディ・ブリン・ハーマー(ソプラノ、アメリカ娘ですね)に対する拍手が大きかったかな。苦悩する兄グンターはイアン・パターソン(バスバリトン)。登場が短かったけど、アルベリヒでエリック・オーウェンズ(バスバリトン)、ワルトラウテでヴァルトラウト・マイヤー(メゾソプラノ)も。

ルパージュ演出は1作目のように歌手を吊り上げることもなく、比較的淡々としたもの。回転板を彩る映像は見事で、特にジークフリートの死の直後、河が真っ赤に染まっていくところや、ラストの炎が美しい。ロボット仕掛けなのか、愛馬グラーネの頭の振り具合も良くできていた。幕切れもひねらず、回転板の上下動で静かに川面を表現。「ふりだしに戻る」という、どうしようもなく虚しい印象で幕となりました… 4月には4作の通し上演があるそうです。演者もスタッフも観客も大仕事ですね!

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