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METライブビューイング「エルナーニ」

METライブビューイング2011-2012第9作「エルナーニ」 2012年3月

激しい感情表現でロマン派の扉を開いたと言われるユーゴー原作、ヴェルディ初期の作品をライブビューイングで。新宿ピカデリーのいつもの最後列、3500円。相変わらず混んでます。マルコ・アムミリアート指揮、ピエール・ルイジ・サマリターニ演出のイタリアコンビ。上演日は2月25日。

舞台はおなじみ16世紀のスペイン。国王を怨む山賊エルナーニ、権力欲むき出しの国王ドン・カルロ、そして老貴族シルヴァの3人の男が女官エルヴィーラをとりあう。ドロドロかつ荒唐無稽な展開だけど、4人がこれでもか、という堂々のベルカント合戦を繰り広げてうっとり。

序幕&1幕の約1時間、シルヴァの館でありえない四角関係が描かれる。エルヴィーラのアンジェラ・ミード(ソプラノ)が「エルナーニよ、一緒に逃げて」。外見はころころだし、ちょっと不安定に聞こえるけど、若々しさが好ましい。タイトロールのマルチェッロ・ジョルダーニ(テノール)も線が細い感じながら、徐々にドラマティックテノールぶりを発揮。お待ちかねカルロのディミトリ・ホヴォロストフスキー(バリトン)がもったいぶって登場し、「私についてこい」の三重唱がリズミカルだ。
幕間にはミードが、メトのオーディションでファイナリストに残ったときのドキュメンタリーを紹介。インタビューではホヴォ様が可愛い子供2人と登場しました。

2幕は40分弱だけど、シルヴァとエルヴィーラの婚礼直前、恋人を奪おうと乗り込んでくるエルナーニ、エルナーニを捕まえに来て人質にエルヴィーラを連れ去るカルロ、カルロの横暴に怒り、恋敵エルナーニと手を組んじゃうシルヴァと、2転3転のめまぐるしさです。シルヴァはお馴染みフェルッチオ・フルラネット(バス)。暗い情熱をこめたエルナーニとの二重唱「お前に渡す、どちらでもいい方を」が見事な迫力で、存在感たっぷり。

技術監督セラーズのインタビューなどを挟み、いよいよ3幕&4幕を約50分。舞台はアーヘン大聖堂の地下墓所に飛び、陰謀の合唱「カスティーリヤの獅子が」が勇壮に響く。カルロはエルナーニとシルヴァ一派を捕らえるものの、神聖ローマ皇帝に選ばれたのを機に放免する。身勝手すぎる~ ホヴォ様が冒頭で「ああ、若かりし日よ」を披露。矛盾の大きい役を、見事なヴェルディバリトンとドヤ顔でねじ伏せちゃうのがさすがです。国王にしては生臭い印象だけどね。
そして今度は、エルナーニとエルヴィーラが結婚式を挙げようとするが、名誉を傷つけられたシルヴァが角笛を吹き、なんとエルナーニは誓いを守って自害しちゃう、という唖然呆然の幕切れ。大詰めの三重唱「やめて、むごい人」が盛り上がった。

美術は巨大階段を使っていて、古風だけどスケールが大きい。幕間に見せる、人手によるセット転換が興味深かった。衣装は古典的できらびやか、照明が暗く、落ち着いた演出でしたね。カーテンコールでミードへの拍手が大きいのは、若手を応援するMETらしかった。

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コメント

私はストーリー展開をほぼ知らずに観にいってしまったんですが、
何この話?というツッコミもしばし忘れて どっしりとした雰囲気にのまれました。

あっでも
始まって結構すぐに「ふふん実は王様だったのだよ」的なシーンのどや顔が
見事にアップで抜かれてたのは思わず笑っちゃいそうでした。(嬉しくて♪)
史実に沿うとカルロ王も青年時代だったはず…と雑誌でコメントしてましたが、年若い王のイメージで演じていたのかなと想像。。 ぐいぐい身勝手な役ですが、全ては若さゆえの過ちということでしょうか。(??)

そうかあ~、若いイメージだったのかも。
アップ全開は、ライブビューイングならではの楽しみですよね!

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