ガラスの動物園
シス・カンパニー公演 ガラスの動物園 2012年3月
テネシー・ウィリアムズの著名戯曲を、長塚圭史が演出。徐賀世子翻訳。シアターコクーンの1Fなかほどで9000円。客層は幅広い。休憩を挟んで約3時間と意外に長丁場。
長塚作の「テキサス」とうってかわって、スタイリッシュな舞台だった。現代風のオペラみたいな、奥行きのある壁だけのワンセット。左右に並んだ扉から、女性ダンサーたちが出入りする。全員が薄グレーの服にすっぽり鼻まで身を包み、シーンシーンの雰囲気、緊張や不安を仕草で表現。時に静止して衣装と同じ色調の壁に溶け込み、時にシンプルなテーブルや椅子を移動させて、芝居を動かしていく。お洒落な振付はプロジェクト大山の古家優里。
物語は1945年の作とは思えない、普遍性をもつ。大恐慌下のセントルイス。華やかな南部の思い出に生きる母アマンダ(立石涼子)と、働いて一家を支える息子トム(瑛太)との間では、時代の変化がもたらすズレ、理想と現実のズレがどんどん深刻になっていた。それでもトムは母、そして極端に内向的で生活力のない姉ローラ(深津絵里)を振り切ることができない。息苦しいほどの家族のくびき。やがてアマンダの指図でトムがローラに同僚ジム(鈴木浩介)を紹介し、後戻りできない破綻、喪失へと向かっていく。
俳優はみな達者なものの、とても抑制的。黒いスーツ姿の瑛太は、全編を回想する役回りで、終始淡々としている。みようによっては物足りないけれど、深い悔恨が降り積もるような空気に溶け込む。裏切りの少ない展開にあって、立石の存在感が際立つ。