寿歌(ほぎうた)
シス・カンパニー公演 寿歌 2012年1月
2012年の初芝居は、北村想の1979年初演の代表作。「アット・ホーム・アット・ザ・ズー」でも観た千葉哲也の演出、堤真一ら期待のキャストで。新国立劇場の小劇場、前の方中央のいい席で7500円。ロビーにはドラマ関係など花がいっぱいだ。
1時間20分の1幕劇は、核戦争後の廃墟をさまよう3人、という切実なもの。ただし上演は震災前から計画されていたという。物語の先行きを暗示するプロローグは、今回書き下ろしらしい。そのあと花火、火垂、風雷、惜雪と題した4景が続く。セットは後方の壁にアトランダムに穴が空いていて抽象的。そこに4景それぞれ、「核兵器」の花火やさすらう魂のような螢、舞台を埋め尽くす雪(死の灰)などを見せていく、シンプルな演出だ。
深刻なテーマや宗教的なイメージを、ギャグと言葉遊びを畳みかけて軽快に提示していく。人がいかに愚かで無力か、ということを繰り返し言っているようだけど、全体に不思議な明るさ、やけっぱちの強さのようなものが漂っている。この雰囲気はのちの多くの舞台に影響を与えたのだろうな、と思う。
全体に平板な気がして個人的に今ひとつ乗り切れなかったのは、リズムが合わなかったからかも。リヤカーをひいた旅芸人ゲサクの堤真一はさすがの安定感。キリストを彷彿とさせる、礼儀正しいヤスオの橋本じゅんも破綻はないのだが、ちょっとセリフが聞き取りにくいところがあった。ゲサクと旅をしている無垢な少女キョウコの戸田恵梨香は、期待通りティアードスカートに細い足がとても可愛く、元気いっぱいでいい感じなのだけど、セリフ回しがちょっと辛そうだったのが残念。神戸出身で関西弁は問題ないはずだけど、なぜかな。客席には渡辺えりさんの姿もありました。
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