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METライブビューイング「ファウスト」

METライブビューイング2011-2012第6作「ファウスト」  2012年1月

文豪ゲーテの劇詩「ファウスト第1部」を元にしたグノーの仏語オペラを観る。新宿ピカデリーの観やすい最後列中央がとれて3500円。2度の休憩を挟み約4時間で、上演日は2011年12月10日。指揮ヤニック・ネゼ=セガン。

タイトロールがヨナス・カウフマン(テノール)、メフィストフェレスがルネ・パーペ(バス)、ファウストに誘惑され捨てられる、散々なマルグリットがマリーナ・ポプラフスカヤ(ソプラノ)という実力派キャストにひかれて足を運んだ。ほかにマルグリットの兄ヴァレンティンに貫録のラッセル・ブローン(バリトン)、ズボン役の恋敵シーベルにミシェル・ロズィエ(ソプラノ)。

歌手はみな達者だ。聴かせどころのアリアが多い演目で、パーペが村人を翻弄する愉快な「金の子牛の歌」、カウフマンがマルグリットを慕う「清らかな住まい」(ハイCを披露し大拍手)、ポプラフスカヤが謎のプレゼントに浮かれる「宝石の歌」(コロラトゥーラ満載)など。男前ながらこもった声のカウフマンが、どうしようもなく暗い役どころに合っていたし、ポプラフスカヤは前半の娘さんのシーンでは相変わらず色気がないなあ、と思ったけれど、終盤では後悔から狂気を演じて舞台を引っ張る。崇高な旋律で救いを歌い上げるラストは圧巻。パーペは陰惨な物語のなかで、ほぼ唯一コミカルさを存分に発揮、大柄な悪党だけど間合いや動きが軽快で巧い。

合唱やオケも見せ場があり、ヴァレンティンの出征で盛り上がる「兵士の歌」やファウストとマルグリットが瞬間で恋に落ちる「ワルツ」、マルグリットを追いつめる「教会の場」、大詰め「天使の合唱」などが迫力があった。

しかし今回は新制作の演出の印象が強かったかも。演出のデス・マッカナフはシェークスピア劇やミュージカルで有名とか。左右の階段上に白衣の合唱を並べてシーンを客観的に見せたり、シンプルな長テーブルやベンチの出し入れで場面を転換していくのは、なるほど現代演劇的だ。パーペの魔術など細かい工夫も。
なにより設定が大胆だ。舞台を20世紀に移し、原爆の開発を悔やむ老物理学者ファウストが毒をあおり、一瞬だけ青年期からやり直すことを夢想する、ということらしい。冒頭から原爆ドームの映像が登場し、幕間のインタビューではご本人がナガサキに触れてもいた。オペラはマルグリットの救済に焦点があたっているけれど、もともとは知恵をもった人間の奢りと破滅がテーマなのだろうし、現代的な問題意識も決して否定しない。けれど、5幕で普通はバレエがあるという「ワルプルギスの夜」の描き方など、正直、この時期に日本で観るにはあまりに辛い内容だったことは否めない。カーテンコールで歌手陣の人気に対し、演出家にけっこうブーイングが出ていたのは、読み替えに対する不満からだろうか。やっぱりオペラはもっと夢を見させてほしいかな。

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