深呼吸する惑星
第三舞台 封印解除&解散公演「深呼吸する惑星」 2011年12月
10年ぶりの復活オリジナル、かつ解散公演に足を運ぶ。紀伊國屋ホールでは作・演出の鴻上尚史が、ごく普通にホールでファンを迎えるサービス。80年代からのファン、芝居好きはもちろん、最近の鴻上さんの読者らしき若い女性も多い。前寄り中央のいい席で8400円。
オープニングからキャスト全員の、指ファインダー風のお洒落なダンスで盛り上がる。畳みかける細切れの場面にラメラメのキッチュな衣装、バックで動く幾何学模様、終幕に舞う黄色い花吹雪など、詰め込まれたポップさが楽しい。休憩無しの2時間があっという間。
物語は「誰かがネット上に残したSF小説」という形のファンタジーだ。辺境の星で思いがけず再会した、もう若くない地球人の男女が、とてもリアルな幻影に悩まされる。それは無理やり記憶の底に封じ込めた、青春の過ち。やがて彼らはそんな過去の苦さ、愛おしさに向き合い始める。
全編、可愛らしさが満載。中年男女が見せるこの可愛さに、若い世代はもしかしたら少し居心地が悪いかもしれない。けれど今回は時代の同窓会であり、また卒業式であるということを、あえて強靱なサービス精神で形にしてみせたのだろう。なにせクライマックスが「ずっと好きだった」だもの。
筧利夫がいつもながら、図抜けたリズムと色気で舞台をまとめる。対する若手から参戦の高橋一生が、すらりとした立ち姿、微妙に揺れる声で切なさ全開。この人は本当に存在感あるなあ。知的な印象なのに着ぐるみ着ちゃう長野里美、控えめな小須田康人、裏切らない山下裕子、色っぽい筒井真理子、そしてもちろん大高洋夫と、キャストは安定。ビデオ出演のゲストも。帰りに思わずロビーで、鴻上さんに握手してもらっちゃった~
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