猟銃
猟銃 2011年10月
原作は井上靖の書簡体小説。シルク・ドゥ・ソレイユの「ZED」や映画「シルク」を手がけたフランソワ・ジラールが、陰影が印象的な演出でみせる。モントリオール公演を経たパルコ劇場。機材の関係で、1Fちょっと前より右端の席に移った。7350円。
女性3人が、同じ男性にあてた手紙というかたちで順に思いを語り、13年にわたる不倫の真実を暴いていく。愛人の娘の反発、妻の長年の屈託、そして愛人の意外な告白。それぞれの話が果たして真実なのかどうか。大人っぽいお話ですね。
初舞台の中谷美紀が1時間40分、美文調の膨大なセリフをひとりで語り続け、年齢、性格の違う3人を演じ分けて堂々たるもの。自分から演出家に対し、3人すべてを演じたいと申し出たのだとか。気の強い女優さんだなあ。3人目のところだけマイクを使っていたのは、立場の違いを表していたのか。
冒頭に雨(本水)の中で、男性から手紙を託された詩人のモノローグが流れる。声の出演は池田成志。その後、横から照明を当てた薄暗い舞台の前方の床に、順に水、玉、板を敷いて場面を転換していく。中谷美紀は出ずっぱりで、しゃべりながら役に合わせて着替えるのだけれど、大詰めで白い着物をまとうところも危なげなく、妖艶さを漂わせてさすがだ。着付けの端正さは外国でも受けそう。
手紙の文面を写しだした紗幕の後ろに、ハンターである男性役のロドリーグ・プロトーの姿がぼんやり浮かぶ。猟銃をもち、終始無言で演技といえばごくゆっくりとした動作だけ。見ず知らずの詩人に手紙を送ってしまった、そんな深い孤独が漂う。会話の面白さはないけれど、シンプルで緊張感が満ちたいい舞台でした。収穫。
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