志の輔らくご「異議なし!」「みどりの窓口」「柳田格之進」
志の輔らくごin ACT 2011年10月
赤坂ACTシアターでの3年目。1300人がほぼ満席で、若年層や女性も目立ち、相変わらずオールマイティーの人気ぶりだ。開演前にロビーでミニどら焼きを食べて腹ごしらえ。なんと席が1F2列目のほぼ中央で、ちょっと見上げる角度だったけれど、細かい表情や仕草がわかって面白かった。顔を左右にかなり大きく振り、聴かせどころでゆっくり動かす手法とか。20分の中入りを挟み、3時間近くたっぷりと。5000円。
世界人口が70億人に達するという最新のニュースから、日本の少子化、詐欺的になっちゃってる年金、官僚は優秀な人ばかり集まって物事を決めて、結局間違えている、というマクラから「異議なし!」。2008年のPARCOで聴いた演目だ。マンション自治会の会合でエレベーターに防犯カメラをつけようと相談するが、カメラは高価だからお札を貼ろうとか、1Fの住民はエレベーターを使わないから2Fから運行すればいいとか、近所のペットショップから猿が逃げたとか、どんどん焦点がずれちゃうさまを軽妙に描く。面白おかしさに安定感。
着物を替えて2席目。今年の豪雨、よくぼやいている飛行機の「天候調査」、それに比べて新幹線は引き返さないから優秀、でも自動改札で悶着があって、というマクラから「みどりの窓口」。こちらは2007年の志の輔初体験で聴いたことがあって、懐かしい。窓口に来る乗客が突飛なルートを頼んだり、席がないとは何事だ、手持ちのチケットを全部出してみろと要求したり。疲れた窓口係が居酒屋で同じように…という、日常のディスコミュニケーション話。清水義範原作ですね。人物の演じ分けが見事。
20分の中入り後、黒の紋付での3席目は、新大関の口上「万里一空」のいわれ、殺陣師の裏話から人情噺「柳田格之進」。堅物の浪人・格之進の背景や、質屋源兵衛と碁仲間になる経緯は省略して、いきなり50両紛失のシーンから。セリフ劇でテンポがいい分、格之進を疑う番頭・徳兵衛の、ジェラシーという心の闇がくっきりする印象だ。格之進に枯れた風格があり、徳兵衛とのやりとりで示す沈黙の緊張感が秀逸。娘が吉原へ行くあたりから泣けてきた。
真相がわかって、小僧さんの脳天気さで笑わせてから、いよいよ格之進が質屋に乗り込む。主人と番頭がかばい合う姿をみて、思わず碁盤のほうを一刀両断。娘が同行している設定で、その娘が二人を許し、「黒白ついた」ですぱっとサゲ。娘の犠牲や都合のいい後日談を省き、すっきりさせてました。
いったん下げた幕を上げ、震災復興祈念の一本締め。映像や音楽の演出はなく、巧さをしっかり楽しんだ感じ。赤坂サカスで被災地応援のリンゴを買って帰りました。