秀山祭「沓手鳥孤城落月」「車引」「石川五右衛門」
秀山祭九月大歌舞伎 夜の部 2011年9月
初代中村吉右衛門の芸の継承をうたう秀山祭に、初めて足を運んだ。しかも今回は中村歌昇改め三代目中村又五郎、中村種太郎改め四代目中村歌昇という播磨屋の親子襲名披露で、開演前から高揚感があります。花道のそば、前の方の席で1万5000円。
演目はまず坪内逍遙作で、大阪夏の陣を描いた「沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)」。「二の丸乱戦の場」は立ち回りで、裸武者の児太郎が活躍。「城内山里糒倉(ほしいぐら)の場」では淀の方が、千姫が逃げたことに怒り狂う。休演の芝翫さんに代わり、息子の福助さんが演じます。主戦派の内膳(吉右衛門)と降伏を主張する修理之亮(梅玉)が対立するけど、最後は又五郎さんの秀頼が母・淀の方延命のため降伏を決意する。セリフ劇だし、照明も暗めで、ちょっと地味だったかなあ。
続く口上は、うってかわって華やかに。吉右衛門さんを中央にお歴々がずらり。大御所・藤十郎さんが温かでしたね。
ハイライトは「菅原伝授手習鑑」から「車引」。吉田神社の近くで又五郎の梅王丸と、藤十郎の桜丸が出会い、笠をとるところが格好良い。配役を見たときは、えっと思ったけど、桜丸がちゃんと若々しくて、さすがです。隈をとらないのは上方流とか。ところが肝心の又五郎さんは、息が切れて辛そう。後から聞いたら、公演二日目にアキレス腱を痛めたのだそうで、飛び六法も封印。気の毒です!
場面が境内に移ると、「あーりゃ、こーりゃ」の掛け声にのって吉右衛門の松王丸とのぶつかり合い、見得の切り合い。やっぱり吉右衛門さんは威風堂々、スケールが大きいなあ。牛車が壊れ、歌六さんの藤原時平が登場して幕。青い隈取りが怖すぎます。
最後の「石川五右衛門」は趣向満載で派手。序幕は五右衛門の出生を説明する導入部分で、「大手並木松原の場」では身ぐるみはがれる中納言がコミカルです。「洛西壬生村街道の場」で松緑さんの久吉一行に、染五郎さんの五右衛門が出会う。
二幕目「足利館別館奥御殿の場」で二人が対決、世話にくだけて昔話に興じるところが面白い。続く「足利館別館奥庭の場」でいよいよ五右衛門の宙乗りつづら抜け。ほとんど頭の真上を、上がったり下がったりの大サービスです。ぱちぱちぱち。
大薩摩の演奏のあと、浅黄の幕が落ちて、お待ちかね舞台いっぱい桜が咲く、大詰「南禅寺山門の場」。「絶景かな」の名ぜりふですね。以前に橋之助さんで「金門五山桐」を観たけれど、染五郎さん、負けてないかも。ところどころお父さんに似てきたなあ。白鷹が飛んでくるのは「金門」と同じだけど、こちらは大内義隆の落胤という設定です。山門がせり上がって、巡礼姿の久吉とにらみ合うところは何度観ても美しい。面白かったです!
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