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ボローニャ歌劇場「清教徒」

ボローニャ歌劇場「清教徒」 2011年9月

3演目で予定されたスターテノールが全員キャンセル、しかも「エルナーニ」のリチートラは事故で急死という、ショッキングな展開となった来日公演です。METと同様、内容が変更されてしまったパンフレットは販売せず、入り口で一人一冊配ってました。ページをめくると、リチートラのインタビューページがあって哀しい。
「清教徒」はミケーレ・マリオッティ指揮、ピエラッリの原案に着想を得たというジョヴァンナ・マレスタの演出。東京文化会館大ホール、1F通路ぎわ右寄りの席で54000円。20分の休憩2回を含め、3幕で3時間半強。

ベッリーニの遺作となったこの演目は、超高音で有名なベルカントオペラ。フローレスでなければ意味がない、と思われていただけに、開演前の会場の盛り上がりは今ひとつの感じで、冒頭のエルナーニ総裁の挨拶時からブーイングが出ていました。けれど結果的に、騎士アルトゥーロ(テノール)にセルソ・アルベロ、花嫁エルヴィーラ(ソプラノ)にデジレ・ランカトーレという若々しい配役で、歌心がよく調和して、なかなか楽しめました。

第1幕滑り出しはオケの持ち味なのか指揮の意図なのか、まったりした印象で物足りなかった。主役二人は、そんなオケに押され気味だし。
しかし徐々に調子をあげ、第3場大広間での挙式を目前にした愛の二重唱は堂々たるもの。会場からの大拍手に、思わずアルベロ君が小さくガッツポーズをしちゃって、微笑ましい。透明感のあるテノールです。
フローレス不在で全体を引っ張る役回りになったランカトーレは、可愛くておきゃんな印象。低い音程だとつぶれたような発声になるのが気になるけれど、高音は気持ちいい。愛する騎士が別の女性(実は王妃)と逃げたと知り、愕然とする1幕ラストから、第2幕の「狂乱の場」にかけて、「ランカトーレ・カデンツァ」をたっぷり聴かせました。
叔父ジョルジョ(バス)のニコラ・ウリヴィエーリに存在感。声がよく通るし、長身で見た目も格好良い。2幕ラスト、出陣を控えた恋敵リッカルド(バリトン)役ルカ・サルシとの、勇壮な二重唱が格好良かった。ホルンのソロも美しい。
いよいよ第三幕で、再会した主役二人による二重唱、さらにリッカルド、ジョルジョが加わった四重唱があり、アルベロ君がハイFを披露。楽々、とはいかなかったけど、頑張りました~

総じて細やかな感情表現やドラマ性は少なく、淡々と進んで、ハッピーエンドも唐突だけれど、演目自体がそういうものなのだと思う。ステージは陰影が濃い青、衣装はヒロインの白以外は全員グレーという地味なもの。背景に巨大な剣とベールを描いて、憎しみと愛の相克を表現していたのと、合唱陣が揃って喜怒哀楽を示す手のポーズが面白かった。
物語と演出がシンプルな分、甘い旋律、まるでスポーツのような声の競演を楽しみました。「ロッシーニ・ルネッサンス」以降のイタリアらしい作り、名門の底力なのでしょうか。客席には小泉元首相や山田優ちゃんがいらしてましたね。

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